-黒赤天使の羽は何色?-

□Story.3.5【命懸けの運命】
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新入りはまず検査…なのだが、元々入隊する前から ほぼ毎日受けている2人。

なのでそちらはパスで、早速 訓練という名の戦闘チェック。


イスカとソーマは、神機を装備して戦闘空間に。

既存第1部隊は 上から様子を見れるフロアに。



「…イスカ、前には出過ぎるなよ」


『あい!』



ペアの経験はあるようで、緊張した様子はあまり無い。



「へー…やっぱ戦闘訓練受けてきてるってのは本当みたいだな」



リンドウは2人の構え方等から、初心者ではないことを見抜く。



「そんなの見て分かるんですか?」


「タツミ、お前が初めて訓練した時 どんな気持ちだった?」



一方 ソーマ達を除いて、1番下のタツミは分かっていない。

そんな彼に、ハルさんは自分の経験を思い出させる。



「え、そりゃあ緊張して あんまり動けませんでしたけど……あ」


「そういうこった」



見る限りでも、少女達が動揺している節はない。


初心者でないのは明らかであった。



〈それでは、始めるぞ。フェーズは合計で3、小型・中型・大型の順だ。

 フェーズの制限時間はそれぞれ20分。双方のリタイアは受け付けよう。何か質問はあるか?〉


『ないー!』


「…同じく」



受け答えもしっかりと。

何度もいうが、温度差が激しい。



〈よろしい。では、はじめ!〉


〈グワアァァッ!〉



開始早々の相手は、お馴染み オウガテイル。

訓練用なので水銀仕様だが、脅威は本物と同じ設定。



「ふっ!」



合図と共に駆け出し、重いバスターソードを横薙ぎする。

そこから綺麗にめり込み、横に真っ二つになった。



〈ガアァァッ!〉



2体目がソーマを狙って突進してくる。



『どーんっ!』



心配は不要。

後方で控えるイスカが、銃の神機を放つ。

大きな風穴が空き、絶命した。



「えっ、1発で!?」



通常 スナイパーの弾は、貫通しやすい代わりに 威力がいまひとつなのだが。



「…ふむ、適合率が高い故の結果だな」



驚くタツミを他所に、ツバキは冷静に推察。



「こりゃあ中々の逸材っすね」



腕を組んで見つめる彼女の傍に寄り、話しかけた弟。



「そうだな……それだけ、危ういとも言えるが」


「…ま、俺らがサポートしていけばいい話っすよ」



カチリと煙草に火を点け、笑いかけるリンドウ。

ツバキはそれ以上否定はしなかったが「ここは禁煙だ」と最後にひとこと。


なんやかんやで いつの間にか下の2人は、全てのオウガテイルを片付けていた。

その数 20体、タイムは 2分41秒。

年齢から考えれば、驚異の速さである。



〈第2フェーズを開始する。はじめ!〉



続いて表れたのは、コンゴウとシユウ それぞれ1体。



『あー!サルとトリー!』


「…コンゴウとシユウだ。弱点は?」


『かおとあたまー!』


「…よし、やるぞ」


『あいあいさー!』



まるでおさらい授業のようなやり取りを終えた後、すぐさま戦闘態勢に入る2人。

コンゴウはソーマ、シユウはイスカ。


顔以外に 尻尾や胴体も効く大猿を、粗暴ながらも確実に狙う少年。

一方で 翼と脚も有効な大鳥だが、動きが速い為 全て狙うのは難しい。



『いってんねらい〜♪』



なので 頭しか狙わない方法で。



『あ』



適度に距離を取りながら 弾を撃ち込んでいたイスカだが、擬似アラガミといえど 本物と同じく怒りはする。

活性化したシユウは動きが速くなり、滑空して 少女へ飛んできた。



『よっと〜!』



このままではぶつかる、と思われたが 気付いていたのだろう 鳥神を飛び越えて跳躍。

空中で反転視界のまま、銃筒を向ける。

純粋なにたり顔で ちょうどこちらを向いたシユウにロックオン。


トリガーを思いっきり引いて 放たれた弾丸は、大鳥の頭を吹き飛ばした。



『おわった〜!』


「…こっちもだ」


『あ!イスカのほうがはやかったでしょ!?』


「ふん…同じだろ」


『えーー!!』



ほぼ同時に倒し終えた2人。


タイムは5分ジャスト。

新人ペアの最高記録を 大幅に更新した。



「すっげー…」


「予想以上だな…」



背の低い方 高い方コンビは、終始驚きっぱなし。

ハルオミは大人なのでまだマシだが、タツミにとってかなり衝撃的だったのだから。



〈最後に第3フェーズだ。はじめ!〉



残骸が霧散し 次に形作られたのは、蠍【さそり】と騎士が混ざったような見た目のアラガミ。



「ボルグ・カムラン…!?訓練にしちゃ手強くないですか!?」


「支部長からの指示だ」


「だからって…!」



金属の様に硬い身体から 攻撃が通らず、しかも長い尾針で広範囲攻撃も強力な騎士。

大型自体も 普通の新人ならまだ訓練しないが、どうやら親であるヨハネスが許可したらしい。

いくらなんでも無理があると、タツミがツバキに抗議する。



「…盾と足と尾の根元だ。やれるか?」


『よゆー!』


「交互に攻撃して撹乱する。行くぞ」


『りょー!』



そんな彼の心配など 杞憂とでもいうように、下のペアは少しも動じていない。


合図で同時に突進し 敵の攻撃がくる寸前、ソーマは右 イスカは左にステップ。

片方を狙えば、もう片方が攻撃。

それを繰り返して隙を与えない、抜群のコンビネーション。



「ふむ…ソーマとイスカのツーマンセルが、お互いのフォローが出来て問題無さそうだな…」


「性格は正反対なのに、仲良いっすね」


「…何か通じ合うものでもあるのかもな」



最初は不安そうに見ていたタツミも、素晴らしい動きに 見入って黙っている。

大人3人 ツバキの言葉に、ハルオミとリンドウが話し合う。



「そこまで!これにて、仮想戦闘を終了する」



そして、タイム8分42秒。


全ての部位が破壊されたボルグ・カムランが、少年の剣型神機が刺さる下に 横たわっていた。



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