-黒赤天使の羽は何色?-

□Story.2【死神と天使の出会い】
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少し戻り、サカキが彼女の部屋へ赴いたのとほぼ同時刻。

彼の後へ続くかのように、もう2人の男が歩いていた。



「ソーマ、今向かっている研究室に お前と近い歳の子がいると…昨日話したね?」


「…俺と1つしかちがわないんだろ」


「あぁ、7歳だよ」



ひとりは1年前に、フェンリル極東支部の支部長に就任した ヨハネス・フォン・シックザール。

「ソーマ」と呼ばれた少年は、ヨハネスの実の息子 ソーマ・シックザール。


この時から周りの雰囲気を既に察していた為か、あまり笑わなくなっていた。


極秘研究室へ入り、奥の扉へ赴く。



‘ねぇねぇパパ〜、きょうもじっけんなのー?’


‘今日は違うよ、イスカに紹介したい子がいてね…’


「(…サカキと…おんなの声?)」



扉から聞こえてきた2人の声。

男の方は聞きなれているサカキだと気付いたが、もうひとりは分からない。



「(…おんな…だったのか……)」



これから会う子供の 性別まで聞いていなかったので、それが少女だというのを察した。


ヨハネスが扉を開ける。



「やぁ、来たね。ヨハン、ソーマ」


「おはよう、サカキ」


「………」



サカキは振り返り、ヨハネス達に声をかけた。

一方ヨハネスは挨拶をしたが、ソーマは黙ったまま。


正確にいうと“返事ができなかった”のだ。

目線の先にいる、黒髪の後ろ姿を見つめていたから。



「イスカ、おはよう」


『ふえ?』


「…!」



少女が振り向いた瞬間、ソーマは目を見開いた。


あどけない少女の瞳が、血を染み込ませた様に真っ赤だったからだ。



『あ!ヨハンパパだ〜〜!』


「ハハッ、いつも元気だな…」


「(…赤い目なんて…はじめて見た…)」



ヨハネスを見つけた途端、突撃してきたイスカ。

ソーマはその隣で、彼女の瞳に釘付けの様子。


周りの環境からも人に触れない事が多く、純粋に珍しいと思ったのだろう。



「(…ここにいるって事は…やっぱりコイツも……)」


『…ん??』


「!」



何かを思い 視線を送っていたのに気付いたのか。

ヨハネスを見ていた赤眼が、こちらを向く。

イスカはソーマの顔を見ながら目をパチパチさせ、首を傾げた。



『…??だぁれ??』


「…っ…俺は……」


「おっと、そうだったね。彼はソーマ、君より1つ年上の子だよ」


『…そー、ま?ソーマってゆーの??』


「…あぁ」


『わぁ!』


「!?」



くっついていた支部長から離れ、ソーマの目前へ迫った少女。

瞬時の行動だったので、また驚いてしまい 1歩後ずさる。



『ソーマ!ソーマ!』


「あ、あぁ…なんだよ」


『イスカはイスカ!桐雪イスカ!えっと…よ、ろしく??』


「(なんで首かしげてんだよ…)」



頭にハテナを浮かべて言った言葉。


すると いつの間にか横に来ていたサカキが、そっと彼に耳打ちした。



「イスカはね、生まれつき精神年齢が実年齢の半分なんだ。見た目より、幼い子なんだよ…」


「…!」



彼女が疑問形で言ったのも、本当に意味が解っていなかったから。


体内に偏食因子を持ち、人間としての細胞が少ない為 成長速度が遅くなる。

今の彼女の精神年齢は 実年齢の半分…つまり、3〜4歳程度になるのだ。

言葉については教える人間がよかったのか、案外話せているが。


ソーマはしばらくイスカを見つめた後、静かに口を開いた。



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