-人精の迫 造られた命-

□Episode.2【英霊の聖地と紅瞳の少年】
2ページ/3ページ




コラムと名乗ったおじさんに 引き取られたツイル。

彼は男手独りで武器屋を営み、シャン・ドゥでは評判のお店とか。


もちろん衣食住を提供してくれるので、お店等の手伝いを勝手でたツイル。

店番や武器の手入れ 家事全般も教わり、色々と知識をつけていく。


気付けば、1年の月日が流れていた…───



* * *



『いらっしゃいませー!』



シャン・ドゥ中央にある橋の付近。

何件か並ぶ出店の中、元気な声が響く。



『コラムの武器屋、闘技大会に参加するお客様に向けて割引き中でーす!!』



赤の混ざる黒の髪を揺らし、大きな声で客寄せを行う少女 ツイル。


「この街に来た時とは、見違える程明るくなった」というのはコラム曰く。



《おはようツイルちゃん。店番頑張ってるわね!》


『おはようございます、おば様!

 10年に1度の大会で、たくさんの方が来られるので 沢山売らないとですから!』



胸の前に両拳を握った少女。

自信満々に満ちた表情だった。


今シャン・ドゥでは、ア・ジュールに存在する多数の部族が集い、

10年に1度の闘技大会が行われようとしている。

闘技場にて数日間だけだが、前後日はいつもより沸き立っているのだ。



《それじゃ、頑張ってね!》


『はーい!』



住人のおばあちゃんを見送り、一息ついて業務に戻ろうとした その時…



‘すいませーん、刀見ていってもいい?’


『あ、いらっしゃいませ! ご自由にどう…ぞ……───』



黒髪の少年…いや青年のお客さんだった。



『(…兄様と…同じ……)』



その髪色に、自分の兄だった人の面影を重ねる。


気付けばボー…とほうけて見つめてしまっていた。



『(…あ…この人、瞳が紅色……綺麗…)』


「…ん? 俺の顔に何か付いてる?」


『…え!?』



ほうけていた所為もあり、過剰に反応してしまったツイル。

まだ人と接するのは少し苦手な様だ。



『あ、いえそのえっと…す、すみません……瞳が…綺麗だなー…と……』


「え…俺の? ありがとう…そう言ってもらったのは初めてだよ」


『…そう、なんですか…?』


「あぁ、部族でもあんまりいい顔されなかったし…だからちょっと照れるな…」


『(…やはり、部族等では…良く思われないんですね……)』



コラムと出会い、シャン・ドゥの人々とふれあいながら、1つ疑問があった。

ロンダウ族であんなに侮蔑をうけた自らのオッドアイが、全く非難されなくなった事である。

理由が知りたくてコラムに聞いてみたら、珍しい色の瞳をした人は、ここではよく見るとか。


オッドアイは彼自身も初めて見たが、非難しようとは思わなかったと。

他の住民も一緒で。



『……すみません、変な事を聞いてしまって…』


「違う違う、君は悪くないよ。

 それに…お前の瞳だって綺麗じゃないか」


『え…?』


「えーっと、オッドアイっていうんだっけ?

 俺初めて見て感動した!」


『!……あ…ありがとう、ございます…』



自分も褒め返された為、俯いても分かるぐらいに真っ赤になってしまったツイル。

褒められる事も、勿論慣れていない。



「な? 照れるだろ?」


『…はい…』


「これでお互い様だな、えっと…あ、俺アースト。

 アースト・アウトウェイ。

 お前の名前、聞いてもいいか?」


『あ、はい! あの……ツイル…です』


「ツイルか……じゃあチルだな!」


『…チル…?』


「その方が呼びやすいし…って、変かな」


『そんな事無いです!

 その、愛称というものも初めてだったので……ありがとうございます、アースト様』


「ははっ大げさだなー……よろしくな、チル」


『はい…よろしくお願い致します、アースト様…』



アーストから差し伸べられた手を握り、握手した2人。


ツイルにとっては初めての握手で、初めての“人の友達”

友達からランクアップするかは、まだまだ先の話だが。


因みに彼はこの後、刀を一刀買っていきましたとさ。



*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ