-人精の迫 造られた命-
□Episode.2【英霊の聖地と紅瞳の少年】
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コラムと名乗ったおじさんに 引き取られたツイル。
彼は男手独りで武器屋を営み、シャン・ドゥでは評判のお店とか。
もちろん衣食住を提供してくれるので、お店等の手伝いを勝手でたツイル。
店番や武器の手入れ 家事全般も教わり、色々と知識をつけていく。
気付けば、1年の月日が流れていた…───
* * *
『いらっしゃいませー!』
シャン・ドゥ中央にある橋の付近。
何件か並ぶ出店の中、元気な声が響く。
『コラムの武器屋、闘技大会に参加するお客様に向けて割引き中でーす!!』
赤の混ざる黒の髪を揺らし、大きな声で客寄せを行う少女 ツイル。
「この街に来た時とは、見違える程明るくなった」というのはコラム曰く。
《おはようツイルちゃん。店番頑張ってるわね!》
『おはようございます、おば様!
10年に1度の大会で、たくさんの方が来られるので 沢山売らないとですから!』
胸の前に両拳を握った少女。
自信満々に満ちた表情だった。
今シャン・ドゥでは、ア・ジュールに存在する多数の部族が集い、
10年に1度の闘技大会が行われようとしている。
闘技場にて数日間だけだが、前後日はいつもより沸き立っているのだ。
《それじゃ、頑張ってね!》
『はーい!』
住人のおばあちゃんを見送り、一息ついて業務に戻ろうとした その時…
‘すいませーん、刀見ていってもいい?’
『あ、いらっしゃいませ! ご自由にどう…ぞ……───』
黒髪の少年…いや青年のお客さんだった。
『(…兄様と…同じ……)』
その髪色に、自分の兄だった人の面影を重ねる。
気付けばボー…とほうけて見つめてしまっていた。
『(…あ…この人、瞳が紅色……綺麗…)』
「…ん? 俺の顔に何か付いてる?」
『…え!?』
ほうけていた所為もあり、過剰に反応してしまったツイル。
まだ人と接するのは少し苦手な様だ。
『あ、いえそのえっと…す、すみません……瞳が…綺麗だなー…と……』
「え…俺の? ありがとう…そう言ってもらったのは初めてだよ」
『…そう、なんですか…?』
「あぁ、部族でもあんまりいい顔されなかったし…だからちょっと照れるな…」
『(…やはり、部族等では…良く思われないんですね……)』
コラムと出会い、シャン・ドゥの人々とふれあいながら、1つ疑問があった。
ロンダウ族であんなに侮蔑をうけた自らのオッドアイが、全く非難されなくなった事である。
理由が知りたくてコラムに聞いてみたら、珍しい色の瞳をした人は、ここではよく見るとか。
オッドアイは彼自身も初めて見たが、非難しようとは思わなかったと。
他の住民も一緒で。
『……すみません、変な事を聞いてしまって…』
「違う違う、君は悪くないよ。
それに…お前の瞳だって綺麗じゃないか」
『え…?』
「えーっと、オッドアイっていうんだっけ?
俺初めて見て感動した!」
『!……あ…ありがとう、ございます…』
自分も褒め返された為、俯いても分かるぐらいに真っ赤になってしまったツイル。
褒められる事も、勿論慣れていない。
「な? 照れるだろ?」
『…はい…』
「これでお互い様だな、えっと…あ、俺アースト。
アースト・アウトウェイ。
お前の名前、聞いてもいいか?」
『あ、はい! あの……ツイル…です』
「ツイルか……じゃあチルだな!」
『…チル…?』
「その方が呼びやすいし…って、変かな」
『そんな事無いです!
その、愛称というものも初めてだったので……ありがとうございます、アースト様』
「ははっ大げさだなー……よろしくな、チル」
『はい…よろしくお願い致します、アースト様…』
アーストから差し伸べられた手を握り、握手した2人。
ツイルにとっては初めての握手で、初めての“人の友達”
友達からランクアップするかは、まだまだ先の話だが。
因みに彼はこの後、刀を一刀買っていきましたとさ。
*