-人に戻れた屍-

□#002【和解 〜大切な存在〜】
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スーパーで10人分はあろうかという食材を買い込み、帰宅したのは18時過ぎ。


2人で食べる時は、部屋を交互に使っているので 今日はテルの番。

慣れた手つきで野菜を切って 煮込んで ルーを入れて。


あっという間に出来上がったカレーを、テルは人並み リィカは4人分くらい食べてご馳走様。

彼女は 見た目に似合わず、健啖家なのである。



「洗い物は僕がするから、座っててよ」


『そう? じゃあ少しゆっくりしてから帰るね』



リビングに続くドアは開けたまま、水道の音を背景に テレビを付ける。

自室から持ってきたクッションに座るのが定位置。

これまた持参の折り畳みテーブルを絨毯に置いて、ベッドを背もたれに チャンネルを替えた。



〈続いてのニュースです。本日午後5時過ぎ 調味市上空にて、怪奇現象の目撃が相次ぎました〉



20時のレギュラー番組前にあるニュースの時間で、今日の出来事が流れる中 聞き覚えのある土地の名前が。



『(…あれ、此処じゃん……って、これ夕方の…───)』



少しボーッとしていたので、反応が遅れる。

そういえば自分も見たな…と、オレンジジュースを1口。



「終わったよ、リィカ…っ───」



ちょうど洗い物を終えた輝気が、キッチンからこちらに来る。


死角的に見えない位置だったので、表情は分からなかった。

だが 彼の息を飲む音は耳に届き、振り返る。



『…テル?』


「…あっ、いや…何でもない…」



目は逸らし、フードを徐ろに掴む。

手の方は無意識だろうが、その時の事を思い出したのだろう。

冷や汗と 指先が震えているのは、莉衣花からも見えた。



『…テル、おいで』


「っ…」



立ち上がって後ろのベッドに座り、ちょいちょいと手招き。

少し後退りしつつも、諦めたのか しぶしぶ隣へ。


数分 無言の後、彼女は口を開いた。



『…無理に話してとは言わない。

 話したくないならそれでもいい。


 …でも、“話さないと後悔する”って思うなら 今全部言いなさい』



[言ノ葉の知らせ]で分かっていたとはいえ、経緯までは把握出来ていない。

怪我は無くとも、心配した。

溜め込み過ぎて良い事が無いのは知っているので、少し強めに。



「(…リィカに嫌われたくない……でも、黙っていたって 何の解決にもならないっ…!


 だったら、いっそのこと…っ───)」



数分迷った末 拳を握りしめたまま、莉衣花へ向き直る。



「今までごめん、リィカ!!」


『…えっ!?』



突然の大声に吃驚した彼女だが、輝気の言葉は続く。



「僕はリィカに沢山助けて貰ってるのに…何も返してないし、余計に迷惑を掛けてる。

 今日のことだってそうだ。リィカが来てくれなかったら、帰るのも一苦労だし…


 そうなったのも全部、僕が…僕自身の力に溺れた所為だ」


『………』



自分の非を認めるなど、中学に上がってから無くなっていた。

内心驚きながらも、続きを待つ。



「リィカ……これから僕が話すこと、信じられないかもしれない。

 …変な気持ちになるかもしれない。


 それでも、最後まで全部聞いてほしい」



濃い青の瞳で、真っ直ぐ見つめられる。

偽りは感じられない。



『…うん、分かった』



誠意を受け取り、深く頷いた。



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