-血統がない王太子と 血統の消えた王子と 血統を捨てた王女-
□#cahar【戦士を目指す者】
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王宮を そして王都 エクバターナを震撼させた火災から、3ヶ月が経つ。
民達は 親愛なる王、そして 王子と王女 御三方を失い、絶望にまみれた。
3ヶ月という月日が過ぎても、未だ哀しみは消えない。
それは“彼女”も同じであったが、徐々に前へと進んでいた。
「ローゼンタール〜、ちょっと来てー!」
『はーい、母さーん!』
商い区の外れ。
王都の端辺りになるその家では、少女と母がいた。
「服をたたむの、手伝ってくれるかしら?」
『勿論です! …あ、じゃなくて…分かった…!』
赤茶の髪に、薄桃の瞳。
「ローゼンタール」それが“彼女”の名。
因みに自分で考えたそうだ。
『うぅ…中々慣れませ、ない…』
「そんなに慌てなくてもいいのよ。
これから、ずっと一緒なんだから」
ニコリと笑う、少女の母になってくれた女性 ルミジエ。
今は居ないが、父のジーグ。
現王となった アンドラゴラスの命によって、王宮を追放され [#ruby=自由民_【アーザート】#]に。
王女としての身分を捨て、普通の女の子になったのだ。
それにあたり 口調を変えていこう、という事になり、絶賛練習中という訳である。
『えっと…たたみ方は…こう?』
「そうそう、合ってるわ。
シワが出来ないように、時折伸ばして…───」
覚えなければならない事も多い。
日常生活においてのルールや 家事など。
逃げてばかりだったとはいえ、身の回りの世話は お付の侍女がやっていた。
言うなれば 箱入り娘と同じ。
最近になって、そちらは慣れてきたとか。
[ゴンゴンゴン!]
ひと段落つきそうだった頃、入り口の戸を叩く音が。
「あら、お客さんかしら…
ローゼンタール、お願いできる?」
『は…じゃなくて、うん!』
膝上の衣類を床に置き、立ち上がってトテトテと 戸に近付く。
『は〜い、どちら様で…───』
ドアを開き、外の人物の顔を確認した瞬間、少女は言葉をとめた。
それは ローゼンタールにとって、予想外の人だったから。
『あ…え…なん、で…?』
「…私がいて、驚かれましたか?“王女様”」
彼女を「王女」と呼んだ男。
3ヶ月前、別れた家臣。
『ヴァ…ヴァリッ!!』
「おっと…!
…ハハハ、お元気そうで何よりです」
大将軍【エーラーン】へと昇進した彼 ヴァフリーズ。
多少すれ違いがあったとはいえど、自らが信頼できる人物のひとりなのである。
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