-音と.雷と.宿命と.-
□第1話【Welcome FAIRY TAIL!】
1ページ/4ページ
X.784年 ある日の朝。
今は諸事情で 旗しか掲げられていないギルド 妖精の尻尾【フェアリーテイル】
ひとりの少女がその旗を、じっと見上げていた。
『…ここが…妖精の尻尾【フェアリーテイル】……ですよね…?』
そう零した少女、正確にいうと身長が低めで 少し幼く見えるようだ。
髪は東洋にある果物「ミカン」を思わせる明るいオレンジ。
瞳は薄い緑、宝石のペリドットのように透き通っている。
服の上に白のローブを羽織り、左手に杖を持っている所を見ると 魔導士である事は確実だ。
『(先程の人も、ギルドの方なのでしょうか…)』
顎に手を当て、何かを考え始めた彼女。
『…って、今から悩んでも仕方ないですよね……よし!』
だがあっさり考えを止めて、1つ頷いて前へ踏み出した。
* * *
「あんのヤロォ…!」
「もういい…あいつと関わると疲れる」
場所はギルドの中。
といっても天井も壁もなく、砂地の上に何卓かのピクニックテーブルが置かれているだけだが。
先程「自らがマスターを継げば弱い者は全て排除、史上最強のギルドにする」と、そう宣言したラクサス。
そんなこんなでナツは喧嘩腰になってしまい、それをエルザが宥めていた。
「全く……ん?」
明らかに雰囲気が下がっている中、エルザは溜息混じりに ギルドの入り口で見慣れない人影を見つけた。
「(…サシェ…か…?)」
その人物…先程の少女は、キョロキョロと辺りを見回している。
自らの思い出にいる“彼女”を思い、自然と少女を見つめるエルザ。
ふと視線を向けていたエルザと目が合い、少女は一礼をして口を開いた。
『あの〜、すいません…
こちらのギルドは 妖精の尻尾【フェアリーテイル】で間違いありませんか?』
「(…いや、よく似ているが…違う…)
あ、あぁそうだ。依頼か何かか?」
『あ、いえ! 依頼ではなくてですね…その……』
口ごもり、言葉を止めた彼女。
そんなやり取りにナツ達も気付き、2人の方へ視線を向ける。
「サシェ…? じゃ、ねーな……おんなじ匂いがすんのに…」
「アイツの親戚か何かか? ほぼそっくりじゃねぇか」
「サシェ? その人って、前にミラさんが話してくれた…」
「えぇ。
マスターの補佐をしている人で、彼女は私達をとても可愛がってくれたわ…ほんとにそっくり…」
「へぇ〜…」
ミラへの視線を、再び少女へ向けたルーシィ。
ナツ達も懐かしの人物を思い出したからか、少女を見つめる表情が優しくなる。
彼女も心を決めたのか、俯いていた顔を上げて真剣な表情を見せた。
*