-神に愛されし者-

□第6夜【未来予知とトランプ:前編】
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神田が調べたのは、主に町の住民に関する事。

ここは大きめな町だからか、裕福な者と貧乏な者の格差があるらしい。

町の外れに、貧民の集う住宅まである始末。


ラビは町の建物や、周辺の地形を散策。

目立ったものがあるならば、近くに大きな山があるという。

だが登るには整備もされておらず危険なので、立ち入り禁止になっているとか。


そして最後に、シナデが集めた噂の真相。



「それで、噂は本当だったさ?」


『…うん…実際受けた人に…話を聞いたの…』


「予知したのはどんな奴だ」


『…それが…未来予知は…カードで届くの…

 …その人は…【明日馬車に乗るな 事故が起きるから】

 …って書かれたカードが…前日…ポストに入ってた…って…』


「随分ストレートだなー……でもつまり、結局誰かは分かんねぇって事さね」


『…うん…私も…顔まで…見れなかった…』


「え」


「……」



シナデの突拍子な気になる発言に、ラビは疑問の声を、神田は視線だけを向ける。

彼女がこのような発言をする事を、知っていたかのように。



「…接触したのか?」


『…うん…カードだけ…投げられた…かな……これがそう…』



机の真ん中へ、静かに置かれたトランプカード。

2人はそれに目を向ける。



「…【今日の午後は雨が降る 気をつけて】?

 …天気なんて当てられるんさ?」


『…今日の…午後…』


「「………」」



シナデが零した言葉を聞き、自然と窓へ視線を向ける。


するとそこには…満天の晴れ空に、大雨が降っていたのだ。

所謂にわか雨である。

外を歩く住民も驚き、何人かが店へ雨宿りに。


その中にひとり 全く濡れていない者がいたのを、3人は見逃していた。



「う、嘘さ…ほんとに雨降ってきた…」


「ただの偶然じゃねェか」


‘それは聞き捨てならないなぁ、おにいさん?’


「あ? 誰だオマエ」


『…! (…この声…)』



突然話の輪に入ってきた、茶髪にピンクの瞳をした少年。


その少年は、首からトランプ…ジョーカーの札を下げていた。



「フフッ僕が誰かっていうのは、そこのおねえさんが知ってると思うよ?

 ね、おね〜えさん♪」


「は?」


「どういう事さ?」


[ガタッ!]


「「!!」」



大きな音と共に、椅子から立ち上がったシナデ。

その眼差しは少年にまっすぐ向けている。



『…貴方が…未来予知をしていた…張本人…よね…?』


「「!?」」


「あったり〜♪ 声だけで気付けるなんて凄いね、おねえさん!」


『………』


「ちょっちょっと待つさ!

 ほんとにお前が、未来予知の犯人なのか!?」


「犯人って言い方は無いじゃーん、悪い事してないんだし!」


「…どういうつもりだ」


「どうもこうもないよ? ただ僕は…───」



次の瞬間、少年はシナデの腕を引っ張り…



「「!?」」



その腕に まとわりついた。



「おねえさんに、興味を持っただけだよ? フフフッ」


『…?』


「(こ、このガキ…!!)」


「……」


「僕の名はイリス。


 よろしくね、おねえさん達♪」



未だシナデにくっついたままの少年に、男2人はとてもじゃない程イライラしている。


未来予知の張本人、イリス。

彼との出会いの先に、何が待っているのか…───



幕はまだ、閉じそうにない。



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