-神に愛されし者-

□第6夜【未来予知とトランプ:前編】
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「───…大体分かった。

 未来予知する人間がどんな奴か、探らなきゃならねェな」


『…うん……後1人の人とも…合流しないと…だし…』


「……あぁ」



揺れる汽車の中。


朝日が照らし込む車内で、シナデは任務の詳細を 隣に座る神田に話していた。

夜に発車した後に2人は少し休み、偶然にも一緒に起きたのである。



『…?…神田…誰か…わかるの…?』


「……気にするな」


『…?…うん…』


〈ポテンツァ、ポテンツァに止まります。お降りの方は…───〉


『…あ…もう着くみたい…』


「あぁ、鞄忘れんなよ」


『…うん…』



汽車は停車の為に減速し始め、やがて止まった。


2人は席を立ち、ホームを抜けて町へと歩く。



───…



イタリアで最も標高が高い町 ポテンツァ。

レンガや石畳で整備された町並み。

それに合わせるよう、歩く人々は気品を漂わせる者が多くみえる。



『…綺麗な町…だね…』


「…まぁな。ここで待つぞ」


『…うん…』



とりあえず、町の入口で待つ事にした神田達。



「(そういや…) お前、そのピアス買ったのか?」


『…うん…リナリーが…おすすめしてくれたの…』


「そうか………似合ってる」


『…!…ありがとう…』


「!」



普段から【ありがとう】という言葉と共に、無意識に微笑んでいたシナデ。

常人よりは本当に“小さい”笑みだが。


でも、今見せた笑顔は 今までで1番だと神田は思った。



「………」



思わず顔をそらした神田。

とてもじゃないが真っ赤である。



『…?…神───』



不思議に思い、彼の名を口ずさんだその時…



‘だ〜〜れさ?’


『…!…わっ…』


「どうし……なっ、テメェ!!」



突然目の前が真っ暗になったシナデ。

そのすぐ後、聞き覚えのある“彼”の声が降ってきた。

神田は彼女の声に気付いて振り向いた途端、刀に手を掛ける。



「うわっちょいユウ!

 こんなとこで 六幻【ムゲン】出しちゃダメさ!?」


「うるっせェ! さっさと手を───

『…その声…“ナビ”…?』


「当ったりー! (ほんとは“ラビ”だけど…)」



シナデが言い当てた人物、その男は“ナビ”ならぬ「ラビ」だったのだ。

彼女は完全に覚え間違えをしており、おそらく直らないだろう。

視界が開けたシナデが振り返ると、ニッコリ笑ったラビが立っていた。



『…そっか…後1人って…ナビ…だったんだね…』


「そういう事! コムイに秘密にしてくれるよう頼んだんだ。

 シナデ、ビックリしたさ?」


『…うん…驚いた…』


「よっし、ドッキリ大成功さ! シナデ〜♪」



ラビがまたしてもニコニコしながら、シナデに近付こうとした刹那…



「うおぉぉ!?」


『…!』



2人の間に 刀=六幻【ムゲン】=神田。


ラビは思わず歩みを止めた。



「…バカウサギ、テメェ“も”調子こいてんじゃねェぞ!

 覚悟はできてんだろうな…?」


「いやっだから抜刀すんなって!?

 いくらエクソシストでも捕まるさ!!」


「元はといえばテメェの───

『…神田…』


「!」



今にもラビに刀を突き出そうとする神田。

だが“以前”の様に刃先へ手を添え、止めたシナデ。



『…ナビの…言う通り……ここで…騒ぎになったら…探しにくく…なるよ…?』


「………チッ!」


「(た、助かったさぁ〜…)」



盛大な舌打ちの後、神田は 六幻【ムゲン】を鞘に納めた。

ラビは強ばっていた肩をなで下ろす。


なんだか前にも見たことがある。



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