-神に愛されし者-
□第5夜【初めてのお買いもの】
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神田達が任務に出た次の日。
シナデにとっては2日目の休日になる。
今日も朝早く起きてしまった彼女は、動きやすい私服に着替えて部屋を出た。
向かった先は、教団外の森の奥。
まだ暗い空を仰ぎ、昨日と同じように歌った。
『───…ふぅ……たまには…ここで歌おうかな…』
未だ空を仰ぎながら、微笑むように口元を緩める。
昨日ジョニーに見せた微笑みより、少し明るくなった感じだ。
『…よし…朝の鍛練…しよう……これは…日課…だもんね…
…変幻…心弓〔しんきゅう〕…!』
胸の十字架が光り、やがて大弓の形に変化。
弓と矢を構え、1人なりの鍛練を開始する。
───…
日が昇り始めて、それだけ時間が経っていた事に気付く。
弓矢の鍛練として、小さく狙いにくいものや動くもの等を的にしてみた。
いつもこのぐらいに“彼”が切り上げるので、武器を納めて食堂に向かう。
『…おはようございます…ジェリーさん…』
「おはようシナデちゃん!
アラん? 今日は朝から私服なのね!」
『…はい…今日も…休暇なので…』
「ウフ、よく似合ってるわ!
さぁて今日は何にする〜?」
『…えっと……お蕎麦と…エクレア…で…』
「了解よ、すぐ作るわ!
(なんだか神田推しね…ウフ)」
『…?』
ジェリーが振り向きざまにニコニコしていたが、シナデには意味が分からなかった。
因みに自分がこのようなメニューを頼んだ事も、自覚していない。
つまり無意識に頼んでしまった…という訳だ。
「はい! お待ちどーん!」
『…ありがとう…ございます…』
料理がのったトレーを受け取り、適当な席に座ったシナデ。
普段から団服以外を着ない、着る意志を持たなかった彼女なので、私服だとかなり目立っている。
現に 探索部隊【ファインダー】や化学班等から、視線を集めていた。
本人はご飯中なので、気付く事も無いが。
そんな時…
「やっと一段落着きましたね、班長」
「そうだなー…メシ食ったら少し寝るか。
どうせあの巻き毛の所為で、仮眠程度しか出来ねぇけどな」
「結局コムイ室長、コーヒー飲んだだけで全然仕事してなかったッスからね」
食堂に入って来た白衣の男達。
化学班のリーバー、ジョニー、タップの3人だ。
昨日徹夜して仕事を終えたのだろう、相当お疲れのようだ。
話の内容から察するに、某巻き毛は逃走したらしいが。
「どこ空いてるかなー……あっ!」
「どうしたジョニー?」
「あそこ…!」
「ん? あっおいジョニー!」
料理を受け取りながら周りを見渡したジョニーは、水色と黒のグラデーションを見つけた。
そんなグラデーションなんて、教団には1人しかいない。
ジョニーはトレーにのった料理が溢れそうな勢いで“その場所”へ掛けていった。
「…シナデ!!」
『…!…ジョニー…さん…?…おはよう…ございます…』
「あっう、うん お、おはよう…!」
ご飯中に話しかけられたので、少し目を見開きながらも挨拶を忘れない彼女。
ジョニーもジョニーで、辿々しく挨拶を返した。
「おいジョニー、いきなりどうした…
…って、シナデじゃないか おはようさん!」
「おはよう〜」
『…おはようございます…リーバーさん…タップさん…』
「「(なるほど…ジョニーが走っていったのはこの事か…)」」
走っていった彼を追って、リーバーとタップも合流する。
ジョニーの事をよく知っている彼等だからか、すぐに原因が分かりニヤニヤして彼を見ていた。
そのままシナデと同じ机で食べる事にした3人。
「…シナデ、今日は私服なんだね……に、似合ってるよ」
『…ありがとう…ございます…[もぐもぐ…]』
「「(ジョニーのやつ…)」」
隣に座れたジョニーは、たまにチラッと彼女を見て他愛もない話をふってみる。
そしてまたニヤニヤしながら見守る2人。
食事中なので乏しく反応するシナデ。
今日は“彼”が居ないからこそ起きた、珍しい光景であった。
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