-神に愛されし者-

□第4夜【もう1人のアリア】
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着いた場所は、教団外にある森の奥。


星空に月が輝き 真っ暗な森を照らしていたので、不気味さは感じない。

1つ深呼吸して月を見上げる。



『(…ここなら…誰も来ない……神田以外……

 …神田…いないし…)』



目を閉じて、再度思い出し直す。

夢で唄っていた歌を。



『(…歌詞も…音も…覚えてる……少しの…手掛かりから…だもんね…)』



もう一度大きく深呼吸して 目を閉じたまま、歌う。


“子守唄”を。



【ララの子守唄】

原曲:アニメ「D.Gray-man」5話 挿入歌

提供:Yahoo知恵袋


Lacrimosa dies illa [涙の日、その日は]

ラクリモサ ディエス イラ


Qua resurget ex favilla [罪ある者が裁きを受けるために]

クア レスァジェット エクス ファヴィラ


Judicandus homo reus. [灰の中からよみがえる日です。]

ジュディカンドゥス ホモ レウス


Huic ergo parce deus. [神よ、この者をお許しください。]

ヒュイク エルゴ パルチェ デウス


Pie Jesu domine [慈悲深き主、イエスよ]

ピエ チェス ドミネ

※[]は日本語に意味を訳したものだそうです



──────……



『…ふぅ。えへへ、どう…かな?』


「…な、なんて綺麗な歌と声なんだ!

 感動したよシナデー!」


『うわぁ“ロアパパ”!? 泣き過ぎだよ〜!!』


「うっうっ…涙が止まらないよ。

 娘がこんなにも綺麗な歌声を持っているなんて!!」


[ガバッ!!]


『うー…ロアパパ、恥ずかしいし苦しいよ〜…』


「あぁすまないね、可愛くてつい…」


『(…あれ、主旨変わってる?)』


「…オイコラ、何やってんだクソジジィ」


「こら、クソジジィはないだろう」


『あ、2人共おかえり!

 だいじょぶ? 怪我してない??』


「…なんともねェ」


「大丈夫だシナデ、ありがとうな」


『えへへ! 良かった…』


「…俺はそう簡単に死なねェ…ついでにコイツらもな。

 心配しすぎだ」


「「(ついでなんだ…)」」


『…うん、知ってるよ。だって皆は…───


───私の大事な“家族”だから!───



──────……



月が見下ろす森に、独りの歌声が響く。

どこか儚く、だけど美しい…そんな歌声。


歌い終わり、ゆっくり目を開ける。

その目には今までよりほんの少し、生気が戻っている気がした。


左手首のブレスレットも、脱色状態から淡く色が付いている。



『…思い…出した……あの歌は…子守唄…

 …一緒に居てくれたのは…一緒に居た3人は…───

[グ〜ルルルル〜…]


『………』



静かな森に突如響いた音は…なんとお腹の音。

勿論独りだけなので自分のものである。

紡いでいた言葉も止めてしまうシナデ。



『…お腹…すいたな……ご飯食べないと…食堂行こう…』



もう既に頭の中は『お腹がすいてご飯が食べたい…』の思考で埋め尽くされてしまった。


そのまま何事も無かったように、踵を返して教団内に向かうシナデであった。



───こうして、休日1日目は幕を閉じた。


次の幕開けは、2日目の休日。



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