-神に愛されし者-
□第4夜【もう1人のアリア】
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アレンが入団した次の日。
時刻は日の昇らない午前4時頃。
神田はいつものように、教団外の森で鍛練を行っている。
ただ いつもと違うのは、一緒に“彼女”も鍛練している事だ。
「はあぁっ!」
『…っ…一矢…!』
「!…チッ!」
教団外にある森の中で、金属のかすり合う音が響く。
どうやら2人は、発動無しの手合わせをしているようだ。
神田は刀 シナデは弓矢だが、共に全く引けを取らない。
神田が横一戦に 六幻【ムゲン】をなぎ払うが、彼女は難なく後ろに避ける。
そして避け際に弓を構え、彼に向けて矢を放った。
神田は頬スレスレに矢を避けたが、髪が少し散ってしまい 舌打ちをかます。
『…あ…髪…ごめん…』
「気にすんな。
いくぞ……手加減しねェからな」
『…了解…』
再び構え、同時に地面を蹴った2人。
神田は刃を突き出してきたが、シナデは上に跳んで彼を飛び越える。
着地後すぐ回転して、あらかじめ左手に出していた矢でなぎ払った。
が 既におらず、目にも止まらぬ速さで彼女の後ろに回っていたのだ。
しかしそれにも全く動じず、後ろからくる 六幻【ムゲン】の一撃を弓で防いだシナデ。
お互い一歩譲らずの攻防戦。
鍔迫り合いの後、其々武器を弾き 距離を取った。
「………」
『………』
2人の沈黙で森は静寂に包まれるが、先に神田が刀を鞘に納めた。
『…終わり…?』
「あぁ、このぐらいにしてメシ行くか…日も出てきたしな」
『…うん…』
神田の提案にシナデも発動を解除し、食堂へ向かう。
道中、神田が申し訳なさそうに切り出す。
「…昨日は、悪かった」
『…?…どうして…?…あれは…私が…───
「いいから……お前は何も言うな」
『……うん…わかった…』
* * *
今日も朝から人の多い食堂。
神田はいつもの蕎麦 シナデはモーニングセットを受け取り、空いている隣同士の席についた。
「…お前、毎日食べるやつ変えてんのか?」
『…うん…リナリーが…
「毎日違うもの食べると体に良いわよ」…って……神田は…変えないの…?』
「お、俺はこれでいい… (アイツ…吹き込んだな…)」
『…そう……いただきます…』
お互い他愛もない話をしていると、後ろの席からすすり泣く声が聞こえてきた。
どうやら 探索部隊【ファインダー】の人達が、仲間の死を悔やんでいるようだ。
その事に嫌気が差したのか、神田が視線はそのままに 後ろの人間に吐き捨てる。
「オイ、悔やみ事は他所でやれよ」
《…あ? 何だとコラァ!!
もういっぺん言ってみやがれ、あ゙ァ!?》
《おい、やめろバズ!》
神田の言葉が勘に触り、掴みかかる勢いで叫ぶバズとやら。
蕎麦のつゆ入れに箸を置き、相変わらずの態度で言葉を続ける。
因みにシナデは全く気にせずご飯を食べている。
「うるせーな…メシ食ってる時に後ろでメソメソ死んだ奴らの追悼されちゃ、味がマズくなんだよ。
(普通に食ってる奴も居るがな…)」
『[もぐもぐ…]』
《テメェ…それが殉職した同志に言うセリフか!!
俺達 探索部隊【ファインダー】はお前等エクソシストの下で、
命懸けでサポートしてやってるのに…それを…それを…っ───》
男が拳を作り、そのまま…
《メシがマズくなるだとーーー!!》
神田目掛けて殴りかかった。
彼はそれを顔色1つ変えずに交わし、逆に男の首を掴んで軽々と持ち上げる。
《うぐっ…》
「“サポートしてやってる”だ?
違げェだろ、サポートしか“できねェ”んだろ。
お前等はイノセンスに選ばれなかった ハズレ者だ」
神田の言葉に、他の 探索部隊【ファインダー】達も妬みの目を向ける。
一方の彼は、更に鋭い目付きで言葉を続けた。
「死ぬのがイヤなら出てけよ。
お前1人分の命くらい、いくらでも代わりはいる」
「ストップ」
その時 神田の腕をアレンが握り、彼を制止した。
「関係無いとこ悪いですけど、そういう言い方は無いと思います」
「……放せよ“モヤシ”」
「(モヤ…っ!?) アレンです」
「はっ…1ヶ月で 殉職【くたばら】なかったら覚えてやるよ。
ここじゃパタパタ死んでく奴が多いからな、こいつらみたいに───」
腕を掴んでいるアレンの手に力が入る。
その拍子に、神田の手から男が解放された。
気絶していたのか、何も言わずに崩れ落ちる。
「だから、そういう言い方は無いでしょ」
「……早死にするぜ。お前…キライなタイプだ」
「そりゃどうも」
2人の視線の間に稲妻が走り、効果音が付きそうなオーラもにじみ出る。
『…ごちそうさま…』
「「!?」」
そんな空間をぶち壊したのは、手を合わせて御飯を食べ終わったシナデ。
あまりにも突然だったので、神田もアレンも唖然としてしまった。
2人の視線に気付き、座ったまま振り向く彼女。
『…?…どうしたの…2人共…?』
「え!? い、いやぁ〜…」
「…何でもねェよ」
『…?』
*