-神に愛されし者-

□第3夜【新たな神の使徒】
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〈こいつアウトォォオオ!!〉



2人が医務室で話をしていた時、突如門番の声が教団内に響き渡る。



『…何…これ…?』


「…アクマが教団に来たって事だ」


〈こいつバグだ! 額のペンタクルに呪われてやがる! アウトだアウト!!〉


『…本当だ……あれ…神田…?』



シナデが神田に視線を戻した時、既に彼はおらず。

なんと、病室の窓枠に足を掛けていたのだ。



『…神田……もしかして…アクマを…?』


「あぁ、お前は───

『…私も…行く…』


「!」



神田の言葉を遮り、彼を真似て 窓枠に足を掛ける。


いつも遮るのは神田だったが、今回はシナデが遮ってしまった。

それに少し驚く神田。



『…神田…怪我…してるから…』


「…やる事ねェと思うけどな……好きにしろ」


『…うん…』



2人は窓から跳び、門番の上に降り立った。



───…



門番の前には、白髪の少年が立っている。


少年はこちらに気付き、上を見上げた。



「1匹で来るとは、いい度胸じゃねェか…」



神田が見下ろして、少年を睨む。



「シナデはここにいろ。

 怪我の事は、心配するな」


『……了解…』



シナデは命令されてしまったので、間を置きながらも頷く。



「ちょっ、ちょっと待って!!

 何か誤解されて…───」



少年が慌てて否定するが、神田は 六幻【ムゲン】を抜き 少年の元へ降りながら一太刀浴びせる。



[ドォォン!!]



地面が抉れる程の凄まじい威力だが、少年は自らの左腕を変形させて防御していた。



『(…!…あれ…は…)』


「……お前…その腕は何だ?」



少年の異様な左腕に、神田は問いかける。

彼は少し間を置いて口を開いた。



「……対アクマ武器ですよ。僕はエクソシストです」


『(……エクソ…シスト…?…じゃあ…彼は……)』


「…何?…門番!!!」


〈いあっでもよ、中身がわかんねェんじゃしょうがねェじゃん!

 アクマだったらどーすんの!?〉



シナデは門番の上で、言い争う男達を見つめていた。



[リリーン! リリーン!]



その時、彼女のゴーレムのコール音が鳴り響く。



『…はい…シナデです…』


〈リナリーよ。

 シナデ、今門の上にいるよね?〉


『…うん…いる…』



通信の相手はリナリー。

彼女は監視のモニターを見ているらしく、シナデがここにいる事を知って通信をくれたようだ。



〈こっちで状況見てるけど…どう思う?〉


『…私は…あの子は…アクマじゃないと…思う……でも…』


〈…神田が斬っちゃいそうな感じよね…


 …シナデ、何とかして止めてもらえる?

 その後あの子に色々聞いてみて?〉


『…了解…止める…』


〈ありがとう……貴女もあの子も 怪我しない程度に…ね〉


『…うん…』



通信を終え、下へ視線を戻した時。

案の定神田が 今にも少年に斬りかかる体勢をとっていた。

シナデは胸のペンダントに手を当てて、イノセンスを発動する。



『…神幻奏歌【ミューズ・ファンタジア】…変幻…心弓〔しんきゅう〕…』



形状変化した弓を構え、神田と少年がいる下方向へ照準を合わせる。

その直後、神田が 六幻【ムゲン】を構えて走り出した。


シナデは2人がぶつかる間に、1本の矢を射ち込む。



「「!?」」



神田の進行方向に矢が放たれたので、彼は地面を蹴って後ろに下がった。

突然の事に 2人は矢が飛んできた方向、門番の上を見上げる。


そこにいたシナデは上から跳び、神田と少年の丁度真ん中へと降り立った。

それを見て詰め寄って来たのは、紛れもなく神田の方。



「おいシナデ、お前どういうつもりだ!

 上にいろって言っただろ!」


『…リナリーに…止めるように…言われた…から…こうした…』


「何?……チッ!」


「(な、何でこっち睨むんですか…)」



神田は腕を組み、舌打ちをかまして少年を睨んだ。

彼の態度は気にせず、シナデは後ろで固まっている少年へ振り返る。

一瞬身体を揺らした少年だが 彼女から殺気を感じない事が分かり、戸惑いながらもこちらを見る。



『…驚かせてしまって…ごめんなさい…


 …アクマとかは…置いといて…貴方は…誰…?』



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