-神に愛されし者-

□第2夜【魔女の棲む村】
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次の日、早朝から任務が入る。


呼ばれたエクソシストは 神田とシナデ。

急を要する任務の様で、呼びに来たリーバーは慌てていた。


神田は先に室長室へ赴く。

それはリーバーが呼びに行った時、もう目覚めて団服を来ていたからだ。

恐らくいつもの鍛練のおかげで早起きなのだろう。

呼びに行ったリーバーは 少し驚いたとか。


一方シナデは就寝していたので、室長室に着いたのは後になった。



『…失礼します…』



ノック音の後にゆっくりと室長室の扉が開き、遅れて入ってきたシナデ。


そこで ソファーに座っていた神田と目が合う。



『…おはよう…ございます…』


「……あぁ… (今日はシナデとか…)」


「おはようシナデちゃん。

 急いで来てもらって悪いんだけど、座ってくれるかい?」


『…はい…』



2人掛けソファーの空いている方、神田の隣に座ったシナデ。


そして任務の説明を始める、黒の教団 室長を務める眼鏡の男性 コムイ・リー。

いつもは仕事をしないシスコンだが、室長としての実績は本物である。



「2人共悪いね、朝早くから」


「今度の任務はどこだ」


「ドイツ北部にある 森林地帯のダンケルンという村なんだが、最近その村に行った人が帰ってこないらしいんだ。

“帰らずの森”という噂がたっていてね…」


『…帰らずの森…ですか…』


「そう。

 だからイノセンスによる奇怪現象の可能性があるので、探索部隊【ファインダー】を3人、調査に向かわせた。


 2日前の事だ」


『……連絡が…途絶えたんですね…』


「そういう事…これが細部の地図になる。

 ダンケルン村はこの森の奥にあるんだ」



コムイは、本の山の上に1枚の地図を置いた。



「ドイツに着いたら、まずミッテルバルトに向かってくれ。

 森は一本道になってるから、道なりに進んでいくとダンケルン村に着く“筈”だから…」


「…着く筈…だと…?」


「いやぁ“帰らずの森”なんて言われてるからね…何かあるかもしれない……

 2人共、気を付けて通ってね」


『…はい…』


「…ふん」



彼の心配に対し、神田は興味無さげに鼻を鳴らす。

だがコムイは気にする事無く、2人に任務を下した。



「では今すぐドイツへ向かい、探索部隊【ファインダー】の救出に当たってもらいたい」


「わかった」


『…了解しました…』



神田とシナデは、室長室を後にした。



* * *



ドイツに向かう汽車の中、個室で向かい合って座っていた。


暫く無言のままだったが、ふとシナデが
首を傾け始める。

それに気付いた神田。



「…眠いのか?」


『…!』


「眠いんだろ」


『……うん…』


「今日は早かったからな……ん、だが昨日は起きてたな」


『…昨日は…起きちゃって…不思議な…夢を見たから…』


「…夢?」



“夢”という単語に、神田は反応した。



「…どんな夢だったんだ」


『…男の子と…女の子がいて……男の子が…殴られて…


 …でも…その後…女の子が…笑って……それ…で……』


「それで?」


『……それで…終わり…だった…』



眠気の影響で、余計にぼーっと答える。

意外に覚えてはいたが、それでも朧気なようで。



「…そうか。眠いんだろ、着くまで寝とけ」


『…え…でも───

「いいから寝ろ」



彼女の言葉を遮って、神田はシナデに“命令”した。

シナデは感情が無い所為か、命令や頼み事には逆らわない節がある。

神田に対してだけは、少し抵抗する時もあるようだが…



『…う…ん…』



渋々ながらも頷いた彼女は、すぐに目を閉じて、寝息を立て始めた。


どうやらかなり我慢をしていたようで。



「(…ったく、世話の掛かる…)」



シナデが眠り始めたのを確認した神田は、溜息をひとつ吐いた。

そして、彼女が先程話した夢の事を、少し考える。



「(…まさか…同じ夢を見てたなんてな……確かにあの夢は…俺とシナデの…───


 …だが、それにコイツは気付いていない)」



ふと、向かいの席で眠っている彼女の顔へ目を向ける。


ジッと暫く彼女の顔を見ていたが、突然立ち上がり 起こさない様にゆっくりと近づいた。



*
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