-神に愛されし者-
□第1夜【序章前の休日】
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‘ね〜え〜…’
‘あ? 何だよ…’
‘私ねー、貴方に伝えたいことがあるの!’
‘突然だなオイ……で、何なんだよ’
‘ふっふ〜 それはね〜〜、まだ言わないの!’
‘…はぁ!? 何矛盾したこと言ってんだよ!
伝えたいとか言って教えないとか、バカか!?’
[ドガッッ!!]
‘ちょっと! 人の話聞いてた!?
“教えない”なんて一言も言ってないわよ!!
それに年上にバカ言うな!!’
‘痛っ……テ、テメェ…先に殴んじゃねェよ!’
‘ふん、そっちが悪いんでしょ?
とにかく! 今は言わない…“教えない”じゃなくて“言わない”!
ここ重要!’
‘…チッ、分かったよ…’
‘…フフッ、そういう所は物分かり早くて助かるわ〜
…じゃあこの事、いつかの為にちゃんと覚えといてね!
───“ユウ”───
─────……
「……夢……か…」
時刻は日の昇らない 朝の4時頃。
窓はヒビが入り、ベッドと1つの私物しか置いていないある一室。
その殺風景な部屋の主、長い黒髪に青眼の青年 神田 ユウは、うっすらと目を開けて呟いた。
「(…いや、これは夢じゃなくて…俺と“アイツ”の………)」
ベッドから状態を起こし、少し考え事に耽る神田。
ふと時計を見れば 4時きっかりだった。
「(…ま、いい。鍛練の時間か……行くか)」
と、あっさり考えることを止め 鍛練の為に準備をし始めた神田。
それが彼らしいといえば彼らしいのだが。
下ろしていた長い髪をポニーテールで結び、コートになっている団服を羽織る。
そして自らの対AKUMA武器 六幻【ムゲン】を手に取り、部屋のドアノブに手をかけた。
* * *
同時刻より少し遡った頃。
ベッドと、壁に向かわせた机と椅子。
クローゼット、そして小さい丸テーブルに二人掛けのソファー。
基本的な物の数だが 小物は一切無く、それだけしか置いていない部屋で“彼女”は目覚めていた。
上は空のような水色、下は黒の2色という珍しい髪色。
瞳は右目が黒、左目が金色の オッドアイの少女。
名を シナデ・ミワタヅミ。
神田もそうだが、此処 黒の教団エクソシストの1人だ。
『…今の夢って…もしかして……』
虚ろな表情で言葉を零したシナデ。
どうやら彼女も夢を見たようだ。
神田と同じかは 定かではないが。
『(…でも…もし夢じゃなくても…私は…───)』
ふと、隣の部屋で物音がした。
『(…?…あ…4時…)』
その音に感化されてか、彼女も準備をし始めた。
足の付け根位まである髪を 一纏めにして留め、左の長い前髪を三つ編みに結ぶ。
そして団服を着用し、短めのパレオを腰に巻いて部屋を出る。
───…
彼女が部屋を出て 前の手すりに手を添えたほぼ同時、隣の部屋のドアも開いた。
そこから出てきたのは先程の物音の主 神田だ。
2人は隣同士の部屋だったのである。
神田は部屋を出てすぐ、彼女の存在に気付いた。
少し驚いた顔をしていたが。
一方シナデは 彼が出てくるのを分かっていたからか、迷いなく視線を神田の方に向ける。
『…おはよう…神田…』
「……あぁ…今日は早いな」
『…うん…目が…覚めたから……神田は…鍛練…だよね…?』
「…そうだ」
『…私も…行っていい…?
…邪魔にならない所に…居るから…』
「…! あぁ、別にいい…」
『…うん…』
また少し驚いた表情をする神田だが、了承してくれた。
神田が驚いていた事に、シナデは気付いていない。
「(…今朝のあの“夢”…前兆か何かか…?
あれは……いや、まさかな…)」
後ろで歩くシナデに 視線だけを向ける神田だが、すぐに向き直し歩みを進めた。
2人は、鍛練する教団外の森へと向かう。
*