-桜色に染まりし姫君-

□#Quattro【Confessioni di una maschera】
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ピッコリーノから数日経ったある日。


アルカナ・ファミリアの姫君こと ウィディーエが、朝にも関わらず街を歩いていた。

いつもならこの時間は寝ている彼女だが 今日は欠伸の1つもせずに、はたまた屋根にも登らずに 通りを進む。



『…ったくあの親父、俺が朝から起きてたってだけで用事頼みやがって……めんどくせ』



ブツブツ文句を言っているウィディーエ。

どうやらパーパから用事を頼まれたらしく、封筒を手に持っている。



『…と、着いた着いた』



ウィディーエが立ち止まった場所。

そこはレガーロ島の玄関、港。


ファミリーの人間で、港にいる人物と言えば…



「お、誰かと思えば…姫さんじゃねぇか」


『ニーノ、ダンテいるか?』


「あぁダンテさんなら、船の近くでリベルタと釣りしてるよ」


『どーも』



港に着いた所でニーノを見つけたので、彼の居場所を聞いた。

用がある人物は、幹部長のダンテだったようで。


言われた場所まで行くと、何処かへ向かうリベルタとすれ違った。



「あ、姫じゃねーか! 珍しいな、こんな朝早くから」


『ちょっとな…てか姫呼ぶな』


「わりぃわりぃ、んじゃなー!」


『………』



いつもの太陽のような笑顔で去っていったリベルタ。

そんな笑顔を返されると、姫君も何も言う気が無くなってしまったようで。


一息吹いた後、踵を返してダンテの方へ向かった。



「おはよう姫嬢さん。今日は朝からとは、珍しいな」


『…揃いも揃っておんなじ事聞いてんじゃねぇよ海バカ親子が!

 あと姫呼ぶな!』


「あぁすまんすまん! つい癖でな…」


『チッ!…これ、父様から』



舌打ち混じりに、持っていた封筒をダンテに渡したウィディーエ。



「あぁ、確かに受け取った。助かったよ」


『別に……ん?』



ふと、ダンテの足元にあるバケツに目をやった彼女。


暫く凝視していたので、彼が口を開いた。



「これか? さっき釣ったばかりの魚だが……欲しいのか?」


『いや、欲しいっつうか…そうだな…久しぶりに“作る気”ができた』


「本当か!? それなら是非持っていってくれ!

 出来れば少し分けてもらいたい!」


『何でそんなに嬉しそうなんだよ…まぁ貰うんだから当たり前だろ、後で届ける。

 んじゃ』


「よろしく頼むぞ!」



バケツに手を翳し、自らの能力で“しまった”姫君。


そのまま再度踵を返し、ダンテに後ろ手を振りながら港を後にした。



───…



館に戻ったウィディーエが早速向かったのは、勿論食堂。



『(マーサ以外誰もいねぇな…まぁどうでもいいけど)』



部屋を見回し 主要メンバーがいない事はあまり気にせず、厨房の方へ入ったウィディーエ。



『マーサ、今いい?』


「おやまぁ姫様じゃないか! ここに来るなんて久しぶりだね!」


『あー…うん、まぁね…俺の服、まだある?』


「勿論さ! いつでも使えるように、洗濯して置いてあるよ!

 ちょっと待ちなね…」



マーサはエプロン等を置いている棚から、白い料理着と桜色のスカーフを出してきた。

洗濯はされているが、よく使われているのかシワがある。

スカーフは、彼女専用ともいえる 髪と同じ桜色。


実はウィディーエ、趣味といっていい程の料理好きなのだ。

しかしこの性格の為か、彼女自身作る気が起こらなければ作らないので、食べた事のある人間は少ない。

正直趣味という自覚も無い…趣味と言えるかも分からないが。


ただ、食べた人間はもう一度食べられる事を願っているとかいないとか…



「はい! 材料は何でも使ってくれていいからね!」


『…ありがと、マーサ』



マーサから服を受け取り、素早く着替えたウィディーエ。

長いサイドテールを上にまとめ パチン!と指を鳴らし、先程しまった魚をシンクの上に出した。


顎に手を当て、少し考える。



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