-桜色に染まりし姫君-

□#Tre【Piccolino】
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『…ハッ、手で止めると思ったか?』



刹那 側転の要領で回転し 逆さまの状態で左足を目一杯伸ばし、力を込めて蹴ったのだ。

彼女らしい止め方だが やはり無理があったらしく、場外に飛んでいってしまった。


そしてそのまま…



「お嬢様、おかおうぅっふぅ!!!」



ルカの頬にクリーンヒット。


その衝撃で、帽子の中に3匹もいた鳩が 空の彼方へ飛んでいってしまった…



「あちゃぁ〜…」


「ルカちゃん大当たりィ?」


『…やっちまった』



目を回していたルカは、3人の声を聞いてピンポーン!と起き上がった。



「パーチェ貴方私を殺す気ですか!?」


「えー…でも蹴ったのは姫嬢で…」


「元はといえば貴方が蹴ったボールでしょう!

 姫様も姫様で、向きを考えて蹴って下さい!!」


『…ごめん』


「分かればよろしいです。


 パーチェ、デビト!

 貴方達ももしこんな球が、お嬢様や子供達に当たったら…───」


「「(おれ/オレ達とウィディーエとで態度が違う…)」」



パーチェとデビトは ルカにガミガミ怒られながらも、ちょっとした不満を思っていた。



* * *



カルチョから少し経ち 雲行きが怪しくなってきたかと思えば、外はすぐさまどしゃ降り雨の天気となってしまう。


デビト・ルカ・パーチェ・ウィディーエの4人で、地域ごとの子供達を送り届ける事に決定。

残ってしまった子は後で送り届ける為、リベルタとフェリチータが教会で見ていてくれる事になった。


子供達を無事送り届けたウィディーエは、来た道を戻る。

教会に着いた時はデビトが既に戻っており、一緒に送り届ける事になった。



『フェル、気を付けて帰れよ』


「うん、姉さんも気を付けてね」


「バンビーナのエスコートは任せたぜェ…」


「おぉ!」



教会を出た2人は 子供と手を繋いで、また街へ向かう。



───…



最後の子達も送り届けて、館に戻る帰路についているデビトとウィディーエ。



「…そういやァお前、一昨日位にルカちゃんをしばいたらしいなァ?」



話す話題もなく無言で歩いていたが、デビトがふと 口を開く。



『あ? あぁ、あの時はリベルタも〆たけどな。

 ルカはパーチェ避けとかで無駄にリアルな幽霊造って騒動起こすわ、

 リベルタはフェルにセクハラするわで、一発蹴っとかねぇと気が済まなかったんだよ』


「おっかねェなァプリメーラは……なーんか、ルカの扱い酷くねェか?」


『え? あー……フッ…ククッ…確かに…な』


「…!」



彼の問いに、ウィディーエは自然な笑みを零した。


性格的にもあまり“笑わなくなった”彼女のそれは新鮮なもので、デビトを驚かせるのには充分な程。


彼女の頭に、そっと触れたデビト。

優しく、頭を撫でた。



『!…何だよ』


「いんやァ? たまにはな…昔よくやってただろォ?」


『…ガキ扱いすんじゃねぇ……さっさと帰るぞ、風邪引く』



足を速めて、デビトより前に出たウィディーエ。

俯いていたので表情は分からなかったが、デビトには彼女が 少し笑っているようにみえた。



「(お前は昔から、撫でられるの好きだったよなァ…エデ)」



昔と変わらない彼女の一面を見つけたデビトは、自然と口角を上げていた。



「仰せのままに、プリメーラァ…」


『いちいちウゼェ』



デビトの大げさな返事に、即座にツッコんだ姫君。

そんないつものやりとりで、館への帰路を歩む2人。


気付けば、雨はすっかり止んでいた。



───こうして、ピッコリーノの1日は幕を閉じた。


次の幕開けは、またいつもの日常。



*
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