-桜色に染まりし姫君-
□#Due【Il Comandante della Squadra Protezione Animali】
1ページ/4ページ
時間は少し、過去に遡る。
フェリチータがファミリーの一員になる為に、住んでいた家から館に移ってきた時の事。
館に向かう車に乗っていたのは 彼女と、運転している従者のルカ。
お嬢はファミリーに入った理由となる 真っ直ぐな思いを胸に、車に揺られていた。
そして フェルを乗せた車は、ファミリーの館入り口で停車する。
「ようこそ、お嬢!」
彼女を迎えたのは、ファミリーの一員であるリベルタや 幹部の面々だった。
「皆さん! 出迎えに?」
「当然!」
「モンドの娘…それに武術長 ウィディーエの 義妹【いもうと】であるフェリチータお嬢さんが、
ファミリーの一員になる記念すべき日なんだ」
「っつーことだ、バンビーナァ…」
「よろしくね、お嬢」
「ありがとう!…あれ、姉さんは…?」
フェリチータは、この場所に 自分の姉が居ない事に気付く。
「あぁ、姫嬢なら───
‘フェリチーター…’
とその時、ふいに空から声が聞こえる。
聞き慣れた声に全員が見上げると、そこに居たのは…
「姉さん!?」
「「「ウィディーエ!?」」」
丁度噂されようとしていたウィディーエだったのだ。
彼女は屋根の上で、こちらを見下ろしている。
だがすぐに跳び、空中で回転してフェリチータの隣に着地した。
それを見ていた男達は唖然としている。
パンツが見えたとかではない。
(因みにスカートの中はスパッツである)
『…っと…遅れて悪いな、用事が長引いちまって…』
「ううん! 来てくれてありがとう、姉さん!」
『…コイツらは知らねぇけど、俺は当然だ。
妹がファミリーに入るのに、迎えない姉なんて居ねぇだろ?』
「コイツらってオレらの事かよ 姫!?」
『当たり前だろ。仕事しろよ。てか姫って呼ぶんじゃねぇよ』
「「「お前が言うな!!」」」
『…チッ』
彼女の仕事しろ発言に、即座にツッコんだ幹部達。
フェリチータは隣で笑っていた。
「ったく…あっそうだ、みんな! 改めてお嬢に自己紹介しようぜ!」
「…必要無い」
「お前はそうだろうけど、お嬢はオレの事よく知らないんだぜ?」
「オレ“達”の事だリベルタァ…」
「そうそう!」
「確かに…」
『…勝手にしろ』
「うん、お願い!」
「よぉし! オレは…───」
───…
「よし! 次は姫だな!」
『…え、俺も? てか姫呼ぶな』
「そおだよ〜、ノヴァも言ったんだしね!」
『…チッ、しゃあねぇな…
俺はウィディーエ、ファミリーの武術長をやってる。
戦闘関係の事は、ほとんど俺に任されてる』
「戦闘関係?」
『あぁ、例えば…フェル、コイツらはそれぞれ セリエに所属やら幹部やらやってる。
お前の入るセリエは、調停を担うセリエ【剣】だ』
「【剣】……それが、姉さんの仕事と関係が?」
『あぁ、単刀直入に言うが…お前はこれから 俺と戦ってもらう』
「…え!?」
* * *
自己紹介が終わり、各々は訓練場に移動した。
何故なら、今からファミリーのお嬢と姫の戦い…もとい 手合わせが始まるからだ。
『…戦うってか、まぁ模擬戦みたいなもんだ。
俺はこれからお前の力を見て【剣】の幹部に相応しいか判断する。
お前は手加減せず、本気で来い』
「…うん、分かった。武器とかは?」
『使うのは己の武器と、使えるなら体術…俺等の場合は蹴り技だな。
アルカナ能力は無しだ』
「…うん」
『審判は母様…マンマだ。
とにかく本気で来い、俺を倒す勢いでな』
「…分かったわ、姉さん」
準備が出来た彼女達は、各々の武器を構えた。
フェリチータはナイフを両手に。
ウィディーエは左手を翳すと同時に現れた槍を。
右足の銃は外し、デビトに放り投げた。
(危ないので使わないらしい)
そして、マンマの手が上がる。
「では、行きますよ…両者………始め!」
*