-桜色に染まりし姫君-

□#Zero プロローグ
1ページ/1ページ




『おじさん…だぁれ…?』



その言葉以前のことは覚えていない

…いや、記憶にないといった方がいいだろう

あっても意味がないのだから



『こんなところに…どうして…?』


「…お前は、独りか? 親は居ないのか?」



周りは枯れた平野で、自分以外に人はいなかった

当然、大人が子供に対して思う事柄だろう



『お、や……おやは…いない…』



私には【親】と言える人間はいない

むしろ“この場所”に大人など、もう残っていなかった…


そのおじさんは、私の言葉に少し顔を歪める

でもすぐに笑って、私の頭に手を置いた



「そうか……お前、名前は?」


『なまえ…えっと、ウィディーエ』


「…よし ウィディーエ、俺と一緒に来ないか?」


『…え?』


「俺がお前の親に…“家族”になろう。


 俺だけじゃない。

 我がアルカナ・ファミリア 全員が家族だ」


『あるかな…ふぁみりあ…』


「どうだ、一緒に来るか? ウィディーエ」



…あの時、差し出された手に自分の手を伸ばしたこと 後悔は全くしていない



『……うん!』



たとえそれが“俺”の運命…


“さだめ”の始まりだったとしても。



*
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ