-孤独の戦士-

□code.7【数撃ちゃ当たる:後編】
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『待たせたな』



数分程で 東の所に到着したネア。


ビルの上から〔アイビス〕を構えていた彼は、こちらに振り向く。



「………」



しかし、何も言わない春秋。



『…? 何だよ、いきなり黙って』


「いや…某ゲームの主人公みたいな台詞だなって…」


『…意味分からん』



彼女はゲームをしないので、知らなかったようだ。



「早速だがこの先で 奥寺と小荒井が狙えない場所にいるラッドを破壊してくれてる。

 あの2人なら援護も要らないだろうが、とりあえず合流しようと思ってな。

 俺と来てくれるか」


『了解した…にしても、随分と信頼してるんだな』


「まだまだ危なっかしいとこはあるけどな…」



〔ライトニング〕へと切り替え、東は立ち上がる。

2人でビル下に降り レーダーの2人へ向かう。

途中 近くはネア、遠くは東と ラッドを破壊。



『あずまさん、これ私が手伝う意味あったのか?』


「ははっ、まぁいいじゃないか。殲滅処理課の依頼中って事でさ」


『はぁ…(歯痒い…帰りたい…)』



東春秋という男は、ボーダーで初めて銃型トリガーの使い手になった人間。

それだけ経験が長い=実力は充分ある。

こんな害虫駆除に、援護がいるとは思えない。


なんとなく引っ掛かりを感じたのと、ボロが出そうで面倒だと思うアユだった。



「…あ、東さーん!」



そうこうしている内に到着し、コチラに手を振る少年達が見える。


薄黄髪の方は 攻撃手【アタッカー】小荒井 登。

黒髪の方は 同じく 攻撃手【アタッカー】奥寺 常幸。

東隊の一員で 2人揃っての剣戟は大したものである。



「ネアさんも、お疲れ様です」


『あぁ、お疲れ…こあらい?』


「奥寺です」



交流が少ない方なので、攻撃手【アタッカー】2人の区別がついていないアユ。

実際逆だったようだ。



‘お、珍しい組み合わせだな’


『…!』



その時、近くのビル屋上から声が。

聞き覚えがあると思い 見上げると、全員銃持ちで 帽子を被った3人組。



「荒船、そっちは終わったのか」


「はい、最後に見回りしてたんすよ」



B級 荒船隊 隊長 狙撃手【スナイパー】荒船 哲次。

同じく 狙撃手【スナイパー】穂刈 篤。

またまた同じく 狙撃手【スナイパー】半崎 義人。

隣合った地区の掃討だったらしく、片付けてからこちらへ来たようで。



『(なんか人増えたんだが…)』



ネアとしては 人数が増す=死角が減る=ふとした事でバレる確率が高いので、仮面中の表情はうげー…としている。

どうせ分からないからだ。



〈よーし作戦完了だ。

 みんなよくやってくれた、おつかれさん!〉



その時、全隊員の耳に通信が入る。

“身近な者”ならば、誰か判別出来る口調と声で。



『(じんの声…未来でも分かったのか…?)』



朝に色々あって、別れたままだった。

頭を抱える様な行為をしたのは迅の方だが。

彼が取り仕切っているということは、安全な未来が確定されたということだろう。



「お疲れ、お前ら。良かったら焼肉奢るぞー」


「お、ラッキー」


「肉〜!」



現場はというと、東が後輩達にご馳走すると誘っている。

もちろん一緒に行ける訳がなく、盛り上がりのかげに乗じて 後にしようとした。



「おっとストップ」


『…!』



…のだが、気付いていた春秋に手首を掴まれる。



「ネアもどうだ? 奢るよ」



振り返ると、いつもの口角だけが上がっている笑みで 鮎を見ていて。

自然と荒船達の視線も集め、見られない分〔ペルソナ〕の中で睨んだ。



『…あずまさん、最初からそれが狙いだったわけか?』


「狙いとは人聞き悪いなぁ……ま、この際親睦を深めたいとは思ってるけどな」


『………』



彼女は目上に礼儀正しく振る舞う方だが、それでもプライドはある。

してやられた感満載なので 少し嫌味を込めて。


全く動じていない東を横目に、仮面の裏に表示されたメール画面を一瞥。

それは“アイツ”からのもので、二重の意味を込めて大きな溜息を吐き 口を開いた。



『…悪いがまたの機会にしてくれ。私はこれでも忙しいんでな』



緩んでいた指の隙間から 前へ進む影響で腕がするりと抜ける。

振り向かず歩きながら 視界に地図を開き、目的の場所へ跳んだ。



「断られたんですか? 東さん」


「あぁ、一筋縄じゃいかないのは分かってたけどな」



大きく跳躍した 〔ロングバッグワーム〕の背中を見送りながら、トリガーを解除した荒船が寄ってくる。


自分も生身に戻り、ふと 右手を見た。



「(にしても……腕、思ったより細かったな…)」



まだほんのりと 感触が残る掌を、閉じたり開いたりしながら。



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