-孤独の戦士-

□code.6【数撃ちゃ当たる:前編】
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[ピリリリリリ! ピリリリリリ!]


『んあっ……え』



それから1時間程経ったくらい。


深い睡眠に入るか入らないかの所で、スマホの着信音が。



『……ここ…何処、だ………あ…じんが、確か…』



飛び起きて周りを見れば、さっきと違う景色。

朧気な記憶を引っ張り出し、なんとか共にいた男の仕業だと思い出した。


その間でも 音は鳴り続けていて、我に返ってから 耳に当てる。



『はい、仮峰で───

〈今何処にいるのよネア!!!???〉



瞬間、大音量。

すぐさま携帯を離し、ついでに目が覚める。



『きょうこさん…』


〈大掛かりな任務が始まるっていうのに、朝から何処に出かけてるの!!

 私は何も聞いてないわよ!?〉


『すみません、ちょっと眠くて…』


〈ハァ…まぁいいわ。とにかく、任務の説明を始めるわよ〉


『お願いします』



ぽりぽりと頬を掻きながら、先程発令された掃討作戦の詳細を頭に入れた。



───…



〈市街地に開く 門【ゲート】の原因が判明しました。

 この小型 近界民【ネイバー】がそうです。


 ただいまより、ボーダーによる一斉駆除を行います。

 発見された方は、ボーダーまで御一報を!〉



三門市全土のテレビから、メディア対策室長の根付による放送が流れる。

既に遠征部隊以外の隊員が駆り出されており、B級以上は各隊。

C級は合同チームでの討伐を。


ただ 三雲修だけは、遊真と2人でだが。



『きょうこさん、レーダー拡張お願いします』


〈距離は?〉


『半径1kmで』


〈了解〉



トリガー 起動【オン】で仮面姿のアユは、一際高いビルの上。

せいぜい数十mから、トリオンを消費して直径約2kmまで上げる。

途端に100以上の反応が視界に映し出されるが、少しも慌てない。

その全ての大まかな距離を予想し、照準を合わせるように。



『月よ、力を……[ジェネリティ]!』



煌術【こうじゅつ】の陣が頭上に赤、足元に銀と 2色表れる。

唱える間 徐々にお互いが近付いていき、終わりと共に交わり 光が弾けた。

粉々となった薄紅は、暫く浮遊の後 何処かへ飛んでいく。

向かうは、表示されたラッド全て。


火弾を出現させる[バーネス]と 即死効果のある菱柱を大量発生させる[ジェデス]を組み合わせた技。

前の世界で1番の使い手である彼女にとっては、このくらい朝飯前。


屋上から視認は出来ないが、レーダーからどんどん消えていくアイコン。

ものの数分といったところで、反応が全て消えた。



『…よし、ここら一帯はこんなもんか』



こめかみに指を当てて、片視界のマスを調整する。


と、そんな時。



〈ネア、通信入ってるわよ〉


『通信? 誰からですか───』



他に手こずっている地域にでも移ろうと考えていた所に、沢村からの知らせ。

チームを組んでる訳でもないので、基本的に回線はオペレーター経由なのだ。



〈俺だ、ネア〉



相手の名を聞く前に 通信が繋がった様で。

落ち着いた雰囲気で、男性の声。



『…! あずまさん…?』



『ネア』としても、呼び名は【さん】付けになる中の1人。

かつて A級1位の隊を任せられ、ボーダー初の 狙撃手【スナイパー】東 春秋。

現在はB級で 2人の 攻撃手【アタッカー】と共に、東隊として活動している。


背景で〈東くん、勝手に通信繋げないでよ〉という沢村に対して〈悪い悪い〉と軽い謝罪の彼。



『…突然通信だなんて、何か用か?』


〈お前、技放つ時に反応確認したのか?〉


『確認も何も、照準合わせてないから問題ない。

 その口振りからすると、あそこ一体にあった3人くらいの反応はあずま隊だったか』


〈そうだよ。奥寺と小荒井が驚いてたんだからな〉


『あーまぁ…すまん。(敬語じゃないと歯痒いな…)』



言葉を選びながらの会話な為、ボロが出ないように頭を使う。

油断していると、目敏く発見するのが東だからだ。

敬語を使いたい気持ちを抑え 尚且つむずむずするから、複雑な気分。



〈ところで、そっちが終わったなら手を貸してくれないか?〉


『あぁ、構わんぞ。

 何処かしらへ援護に行こうと思っていた所だ』


〈助かる。とりあえず、俺の所へ来てくれ。

 場所は沢村さんにマークでもしてもらえ〉


〈ちょっと雑じゃない東くん!?〉



こちらが本題なのだろう、助力を頼んできた隊長。

細かい所はオペレーターに任せ、自分は通信を終わらせる。



〈全く…最後無視してきたわあの人…〉


『仲良いんですね、きょうこさん』


〈…まぁ付き合い長いから。

 はい、東くんの反応マーク付けたから 行ってらっしゃい〉


『ありがとうございます、行ってきます』



一旦沢村との通信を切り、レーダーを確認。

そんなに離れていない場所だったので、ビルを跳びながら向かった。

途中 届く範囲でラッドを壊しながら。



掃討の幕は、まだ降りない。



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