-孤独の戦士-
□code.5【似非双子の災厄:後編】
5ページ/5ページ
「…ありがとう、仮峰さん。
絶対に誰にも喋らないと、きみに誓おう」
『! はい…ありがとうございます』
自然とアユの手を取り、両手で包む。
ぎゅっと握られたことに驚きながらも 感謝を述べた。
「それじゃあ、また連絡する。ココアもミルクも美味しかった!」
『いえ、こちらこそ……夜も遅いですから、お気を付けて』
「あぁ、ありがとう!」
太陽の如くな笑顔を見せ、靴を履く。
ボタンを押して 外を見回しながら確認し、こちらに向けて一礼してから 部屋を出ていった。
仮峰も頭を下げ、ドアを閉める。
『……ふぅ〜〜…』
少しの静寂から、やっと落ち着いたので ネアは大きく息を吐いた。
[ポロン…?]
『ん、シルザード……大丈夫だ、ありがとう』
枕元から動かなかったのが幸いし、ちょうど死角で見られなかった相棒。
心配したのだろう、ふよふよと傍に寄ってきたので 軽くつっつく。
『…にしても、あらしやまさん 帰るあたりで妙に雰囲気が違ったような…───』
手を握られた意味など 鈍すぎて到底気付いてはいないが、嵐山が最初と最後で 何かが変わった事は感じた。
しかし考えても分からず、欠伸をひとつ零したくらい。
[ピ〜ロリロリロ〜ピロ〜♪]
『…ん、あぁ〜…アイツか…』
ベッドに座り 沢村への返信を打ち終わったタイミングで、着信。
緑の受話器マークをスライドして、耳に当てた。
『はい、仮峰だ』
〈実力派エリートでーっす!
あれ? 起きてたんだ、珍しいねー〉
『…あぁ、ちょっとな』
電話の相手はもちろん 迅。
玉狛に帰ってからかけてきたらしく、こんな時間になった様だ。
〈…? 何かあったの?〉
通話越しでも、彼女が疲れている声調なのに気付く彼。
『いや、何でもない。で、どうなったんだ?』
〈あぁうん、実はねー…───〉
今話すことでもないだろうと考えたアユは、話題を変えてはぐらかした。
副作用【サイドエフェクト】も発動することなく、迅も会議の成り行きを話し始める。
彼が会議室に到着した時には、既に修は席に座っていて。
三雲隊員の処罰について ネアが中学での撃破を 木虎が救助の活躍を推してくれたものの、
城戸の「もしまた同じ場面に遭遇したら、君はどうする?」に対して、
彼は除隊されると分かっていても、助けると言い張った。
完全にクビの流れのまま、本題であるイレギュラー 門【ゲート】の対策に移行。
強制封鎖44時間というタイムリミットで、やれるかどうかを自称実力派エリートに問う総司令。
原因をキッパリ見つけてみせると宣言した迅は、その代わりに 修の処分を任せてほしいと言い出す。
『───…で、おさむの処分はお前の働き次第ってことになった訳か』
〈…トゲがあるのは気のせい?〉
『いや? わざとだ』
〈ですよね!!〉
いつも通りの質素なやり取りが繰り広げられる 午後11:00丁度。
近くに浮いているシルザードをぷにぷにしたり あくびをしたりしながら、やいのやいのと会話を続ける。
〈とにかく! 明日の朝、おれはメガネくんと会うから。
アユちゃんも、メガネくんの家の前に来て欲しいんだ。
場所、分かるよね?〉
『そりゃ知ってるが…私が行く意味あるのか?』
〈いや正直視えないから分かんないけど…念の為!〉
『またそれかよ…貸し1つ追加な』
〈はーい……じゃあまた明日ね! おやすみ!〉
『あぁ、おやすみ』
結局、休日なのに朝から出かけることになった仮峰。
いつもは昼まで寝て 睡眠を補充しているのだが、冬休みに入るのだし まぁいいかと許容。
スマホをその辺に投げ出し、勢いよく後ろへ倒れた。
『…あらしやまさんだから良かったものの……これ以上、バレないようにしないと…きどさんに…怒られる…───』
再び付けた電気は、相棒がもう1度消してくれて。
次第に落ちていく瞼に抗わず、就寝に入る。
───こうして、長い長い1日は 幕を閉じた。
次の幕開けは、害虫駆除。
*