-孤独の戦士-
□code.4【似非双子の災厄:前編】
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『ふぅ〜…やっと帰ってこれた…』
就寝 兼 緊急脱出【ベイルアウト】用のベッドに落ちてきたアユ。
時計は 午後6時4分を差していて。
大きく息を吐き、起き上がる。
手に持っているビニール袋の中身を 所定の場所に片付け、私服の上着を脱いで ハンガーに掛けた。
『う…今日はだいぶトリオン使ったからか…既に眠たい……簡単に作って食べて風呂入って寝よう…』
朝からイレギュラー 門【ゲート】だの迅の手伝いだので ほとんどトリオン体であった。
すっからかんという訳ではないのだが、使えば使う程 疲労は溜まっていくもの。
彼女の場合は眠気に影響しやすく、よく寝る方なのはこれである。
それからぱぱぱーっと 晩御飯はお茶漬けで済ませ、いつもより手早く風呂に入り 寝間着に着替えた。
『…シルザード…寝る…電気…』
[ポロンッ]
下ろすと膝くらいまである髪をがしがしかきながら、眠気MAXのため 片言で相棒に頼む。
さっき1度寝転んだ寝具に 倒れる様にダイブして、瞳を閉じた。
パチリと部屋の電気が消え、シルザードは最後 主にシーツを掛けて 枕元に降りる。
『ん……』
寝息は数分で聞こえてきた。
あらかじめ断っていたように、迅の電話には出れなさそうである。
* * *
それから数時間経ち、午後9時頃。
この時間になると、本部といえど人は少ない。
そんな中、硬い素材故に 靴音が響く廊下。
「(えーっと…沢村さんから教えてもらった部屋は、この辺りか…?)」
ところで、ボーダーの人間に聞けば 誰もが頷く不思議がある。
それは「血の繋がりは一切無いのに、あまりにも似過ぎている男性達がいる」というもの。
A級5位 嵐山隊 隊長 嵐山准と、玉狛支部 S級隊員 迅悠一。
髪の色や瞳の色 服なんかは全然違うのだが、ぱっとみた感じ【双子】と言っても過言ではない。
つまり、たとえ長い付き合いでも 確認を怠れば 間違える可能性が高いということ。
「(こんな時間になってしまったが、行くだけ行ってみよう。
居ないなら、また後日に伺えばいいしな…)」
ある要件を伝えるため 嵐山はひとり、ネアの部屋へ 刻々と向かっていたのだった。
惨事の幕は まだ降りない。
*