-血統がない王太子と 血統の消えた王子と 血統を捨てた王女-

□#cahar【戦士を目指す者】
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「ダリューン」



そう呼ばれた、後ろ姿の彼。

ヴァフリーズの声に気付いた少年は、鍛練を止めて振り返った。



「おじ上! いらっしゃったんですね!」



黒く、後ろで結わえた髪に、金の瞳。


ほけー…と見つめながら、ローゼンタールは思った。



『(黒ばっかり…好きなのかな?)』



ダリューンへの第一印象はこれ。

なにしろ、服も靴も【黒】なのだから。

ついでにいうと、身体を動かしたので汗だく。



「…ん? おじ上、その子は?」



息を整え 布で顔を拭きながら、彼は叔父の後ろにいた少女を見やる。


その声で我に返ったローゼンタール。



「ダリューン、この子は私の知り合いの娘さんでな。

 剣術を習いたい、という事で ここへ連れてきた」



ポン…と背中を押される。

自分で自己紹介しろ、という意味だと理解するが なにぶん初めて。


もじもじ躊躇いながらも、覚悟を決めた。



『え…えっと……あたしは、ローゼンタール…です。

 …よ、よろしく』



おずおず…一応手を出すが、視線は俯いたまま。

よっぽど恥ずかしいのであろう。


対してどんな反応を示すか、不安に思ってきた頃。



『ひっ!?』



あろうことか、力強く 差し出した手を握り返された。



「俺はダリューンだ。

 将来は おじ上のような立派な戦士となる為に、剣術を習っている。

 よろしく頼む、ローゼンタール。


 …む、長いな」



驚いているローゼンタールを全く気にせず、こちらも自己紹介。

そしてちょっとした文句…いや、疑問。



『し、仕方ないじゃん、名前なんだから…

 人の名前 省略するのは好きだけど、自分のじゃ思い付かないの…!


 そんなに言うなら、貴方が考えてよ…』



既に恥ずかしさ云々は、何処かにとんでいっている。

口調にも慣れてきて、初の友に 初の頼み。


ダリューンはしばらく考えこみ、こう言った。



「……ロゼ…というのはどうだ?」


『! …ロゼ…?』



今の名前にも“前”の名前にも、繋がりを感じる愛称「ロゼ」

ヴァフリーズも「それは良いな!」と笑っている。



『ロゼ…ロゼ……うん、いいね それ!

 ありがとう、ダリューン!』


「お、おう… (笑った…)

 なら、お前も俺の愛称を考えてくれよ。

 好きなんだろ?」


『ん? いいけど…そうね……じゃあ、リューで!』


「はや…」


『得意でもあるからね!』



『にひひ〜!』とはにかむ笑顔を見せるロゼと「変わったやつ…」と呆れ笑いなダリューン。

それをニコニコと見守るヴァフリーズ。


兄とお話する以外に、楽しいと思える空間が出来た 元王女であった。



───こうして、真黒の少年との出会いは、幕を閉じた。


次の幕開けは、子どもの頃の日常。



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