-血統がない王太子と 血統の消えた王子と 血統を捨てた王女-

□#yek【さよなら 忌まわしきもの】
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パルス暦 295年 8月18日 早朝。



‘うえぇぇん! うぇぇぇん! うえぇぇぇん!!’


《産まれましたぞ!!》



この日 パルス国の王都 エクバターナで、ひとりの赤子が誕生。


命が産まれることは 珍しいことではなく、喜ばしいこと。

次いで もうひとつ。



《元気な女の子ですよ“王妃様”!!》



生まれ落ちた元が 自由民【アーザート】ではなく、パルス国の王妃と 現王 オスロエス5世の間だった事。



「あぁ……やっと…やっと産まれたのね…


 …でも、女の子なら…この子は……───」



未だに泣き続ける赤ちゃんを見つめ、喜びからすぐに 哀しみの表情を浮かべる王妃。


そんな彼女を安心させるように 手を握ったのは 夫である オスロエス5世。



「陛下…」


「…お主が哀しむ事ではない。

 気持ちはわかるが、産まれてきた我らの子に 罪など一変もない」


「…そうですね……

 やっと…やっと産まれてきてくれたんです……


 私達の…“本当の”子が」



王妃の零した言葉に、この場にいる者で 疑問を抱くものはいなかった。


故に、他言もされない。

裏に隠れた、ひとつの真実を。



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