-霧世に舞い降りし闇水の乙女-

□#Funf【下っぱ眷属 対 柱の女】
6ページ/6ページ




『ふぅ…』



遂に粉状まで崩れた破片は、ビル風に流されていく。


行方を見つめるアルトの髪も 靡いていて。

ほんの少し 雲から射し込んだ光に照らされ、幻想的に見えた。



「そんなまさか…滅殺した…!?」



彼女には目もくれず、スティーブンは現場へ走る。

踵を返したアルシュネムトと入れ違いで。


ザップとチェインも、番頭に続いた。



「Ms.メリオローデ!」



我らがリーダーは無下になどせず、こちらへ歩いてくる彼女を呼ぶ。



『リーダーさん……悪いけど、後処理はお願いね』


「Ms、何処へ…」


『疲れたから帰るわ。レオくん、傘ありがとう』


「は、はい…」



立ち止まる事をせず、クラウスを一瞥したのみで 通り過ぎる。

後ろのレオナルドから私物を受け取り、ニコリと笑って その奥へ。



「(…あれ…今何か、割れたような…?)」



彼の場合 その眼で、ヒビが視えた気がした。

アルトが横を通った際に。


だかほんの一瞬だったのと 正確な位置を捉えられなかったのもあり、気のせいだと完結したのだ。



「お待ちください、Ms.メリオローデ!」



事態が終息したのは確かだが、彼女に聞きたい事は山程ある。

リーダーも振り返り、追いかけるが ピタリと立ち止まったアルシュネムト。



『う…ケホッ…』



最初は嘔吐感。

思わず口に手を当て、咳と共に口内に溜まったものを吐き出した。


たった一瞬で、身体が急激に冷える。


ゆっくりと、掌を見た。



『あ…』



ぬるりとした感触。


口端から垂れる液体。


指の隙間からも道に落ちているそれは、自分の瞳と同じ色。


えらく実感の湧かない反応だが、かなりの吐血量だったのだ。



『…やっぱり…制御失敗……してたわ、ね…───』



ぼたぼた零れる血を見ながら 自重気味に口角を上げる。


次第に目の前が真っ暗になった。

足の力も無くなり、ふらりと横に倒れる。



「Ms!!」


「アルトさん!!」



彼女を見ていた2人は、今まさに 倒れていく様を目撃した。

手を伸ばせば届く距離まで来ていたクラウスは、足を早め しっかり受け止める。


気絶したアルトは 顔面蒼白に加え、頬に亀裂が走っていた。



───こうして、眷属討伐は 幕を閉じた。


次の幕開けは、生死の境。



*
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ