-霧世に舞い降りし闇水の乙女-

□#Funf【下っぱ眷属 対 柱の女】
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その日は、珍しく殆どのメンバーが揃っていた。


書類整理をするスティーブン。

イビキをかいて昼寝中のザップ。

部屋の雑用全般をこなすギルベルト。

スマホいじりのチェイン。

プロスフェアー真っ盛りなクラウス…


K・Kとレオナルドは、休暇の為ここには居ない。

彼女の方は 家族とお出掛けするそうだ。



[ピリリリリ…]



そんな時、副官の電話が鳴る。



「ウィ、スティーブン」



1コールで通話を開始した彼は、難しい紙を片手に。



〈スティーブンさん! 今すぐ来て下さい!!〉


「どうした少年。とりあえず状況を… ───」



藪から棒に叫ぶ 電話越しの新人。


相手が誰なのかを呼び方で気付いた者は、手を止めてスティーブンを見た。

銀男は相変わらず寝ていたが。



〈奴らが…血界の眷属【ブラッドブリード】が出ました!

 名前は短いので下っ端っぽいですけど…!〉



ともかく、レオナルドからもたらされた情報は 放置出来ない最重要事項。

チェインはわざと乱暴にザップを起こし、ギルベルトは広げられた書類を片付ける。

クラウスもちょうど勝負がついたようで、デスクから立ち上がった。



「分かった、すぐに向かう。現場の詳細を」


〈あ、あの…それもあるんですけど、もうひとつ大変な事が…!〉


「どうした?」



ネクタイを締め直すリーダーを見ながら、手持ちの紙も執事に渡す。

あちら側の背景では爆発音も聴こえ、ちょうど窓からの景色に ひとつ煙が上がった。


この電話を切ったら、申し訳ないがK・Kへ連絡しよう。

そう頭の隅で考え、準備完了のメンバーと共に ドアノブへ手を掛けた時。



〈その……“アルトさん”が…〉


「…はっ? Ms.アルト!? 何故今更彼女の名前が出てくるんだ!?」



先導していたスティーブンが ピタリと足を止めてしまい、後ろのクラウスとザップも一旦停止。

しかし 彼の口走った名前に、窓から出ようとしていたチェインも振り返る。


SSはともかく、皆【みな】驚きを“隠さない”



〈アルトさんが…血界の眷属【ブラッドブリード】と戦ってるんです!!〉



この中で彼女を見送ったボスは あの時の笑顔が頭に浮かび、拳を握りしめる。



───また会いましょう、リーダーさん───


「(…Ms.メリオローデ…)」



それは、たとえアルシュネムトが強くても 簡単に消えてしまう可能性を秘めていたからだ。



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