-霧世に舞い降りし闇水の乙女-

□#Vier【生きていく術:後編】
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【レオside.】



こういう場合 僕か彼女が不運とでもいうくらい、厄介事が続くものだと思う。


目の前で繰り広げられる会話に対して、何を話し合ってるのか全く分からない

とりあえず見守っていると、突然アルトさんが 僕の後ろにまわって彼に何か言った

聞くと、ナンパへの対処だそうで……僕なんかで断る理由になるんだろうか…


それはともかく、話は終わったみたいで グイグイと前に進むよう、彼女に押される

ちらりと後ろへ振り向けば、俯いてる さっきの人


少し申し訳ないかな…と思ったのも束の間、彼は動いた


僕には、口元が歪んでる様に視えて

しかも 人類【ヒューマー】とはおもえない速さで、アルトさんの肩を掴んで 振り向かせた


その時点で、正確にいうと今更ながら気付いてしまった


言い訳するなら 彼女の“オーラ”に紛れて見落していたんだ


この男が 正真正銘の 血界の眷属【ブラッドブリード】だということに。



「アルトさんっ!!」



気付いてくれという願いと、危険だという警告の2重の意味で 名を呼ぶ

それでも相手の方が速く、露わになってる彼女の白い首元に 歯を立てた


自分を「闇の一族」の末裔だって言ってたけど、

だからって 屍喰らい【グール】にならない保障はないし…!


だけど、次に僕が見たのは 咬まれてしまった彼女じゃなくて


男のいた位置に 足を突き出すアルトさんだった。


ガラスが割れた音や 人々の悲鳴が、ある程度遠くから聞こえる

つまり この一瞬で、道路を挟んだ先にあるビルまで 蹴り飛ばしたということ


…心配する必要、なかったかもしれない。



『…レオくん』


「は、はいっ!」



わっ…事務所の時以上に怒ってる雰囲気…!

何より声が低い……だいぶカンに触ったみたいだ…

後ろの僕へ振り向かずに喋ってるから、どんな顔してるか分かんないけど…



『…ごめんなさい。ダイアンズダイナーは、また今度行きましょう?

 ライブラに連絡、お願いね』


「…分かりました!」



やっとこっちを見てくれた彼女は、笑ってるけど やっぱり怒りを含んでる

オーラも炎の様に揺らめいてるってことは、スタンド? も怒ってるのかな…


…そんなことより、僕は何ですぐに気付かなかった…!

アルトさんが居たからって、見落としていい理由にはならないだろ…!


…だから 僕に出来ることは、スペシャリストをここへ呼ぶ事…!


慌てて間違えないように、なるべく落ち着いて 携帯をタップした。



* * *



なんでもありなこの街で、こんな騒動はいつものこと。


重要なのは、戦っている者が“何なのか”である。



───こうして、容疑潔白は 幕を閉じた。


次の幕開けは、諸刃の手掛かり。



*
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