-霧世に舞い降りし闇水の乙女-

□#Drei【生きていく術:前編】
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『へぇ〜……おしゃれな雰囲気なのね、ライブラ【此処】って』



午後3時31分 ライブラ事務所にて。


あれからメンバーに引率され、オフィスに到着。

周りを囲まれながらも、部屋の内装を見渡した。



『(リーダーさんの趣味かしらね? この場所も、この“手錠”も)』



ちらりと 自分の手元に目線を落とす。

そこには真紅色の 十字架をかたどった錠で、両手は動かせない。



『(ほんっとうに、私の 闇水使断【アミシダ】とよく似た力ね…

 まぁ、操れるのは 自らの血液だけのようだけど)』



ほんのりと笑顔を浮かべるアルト。

自分と同じような能力など、幽波紋【スタンド】以外で見た事がなかったからだ。



「それでは、こちらにお座り下さい」


『えぇ』



大きなデスク前にあるソファまで来ると、片方へ促すクラウス。

浮かべていた笑顔を濃くし、笑いかけて ゆっくり座った。



「では、これからいくつか質問をさせて頂きます。

 その間 場合によっては暫くの間、その手枷をしたままで答えて下さい」


『フフ、抵抗する気は無いんだけど…それが当たり前の処置ね。

 了承したわ』



ひととき、沈黙が流れる。

その時も勿論 笑顔の彼女。


拘束の際にいたレオ達に加え チェインとギルベルトも立ち会う中、

(ライブラ側には)緊張の走る 質疑応答は始まった。



「まず、貴女の名前をお教えください」


『私の名は アルシュネムト・メリオローデ。

 長いから、友人にはアルトと呼んでもらってるわ。

 貴方達も、お好きにどうぞ』



ニコニコと、一番近くに立っているスティーブンを見やる。

彼1人に言った訳では無いが、筆頭という意味で。


表情はあまり変わっていないスカーフェイスだが。



「…次に、貴女は人間ですか?」


『違うわ。

 私は「闇の一族」の末裔…という所ね。

 多分知らないだろうけど……何せ“世界”が違うもの』



隠し立てもせず、はっきりと否定する。

彼女は淑女ではないが、必要以上に嘘をつくわけでもないので。

人間でないことは、先の戦いであきらかだが。



「世界が違う…確かに「闇の一族」という名を、我々は聞いたことがありませんが それを証明できるものは…?」


『証明?

 さっき使った 闇水使断【アミシダ】よりも、決定的なものってことよね?


 うーん、あるにはあるんだけど…決定性に欠けるというか……』



枷の状態で お馴染みの顎に指。

思案しはじめ、周りも少し落ち着いてきた頃合。



「へー、黒の他に白もあったのか…」


「ちょっとザップさん…! 何勝手に 他人【ひと】の刀触ってんですか…!」



ソファの隣にある、クラウスのデスク。

窓との間にある空間には、放置しないでほしいと頼まれた アルトの荷物が。


別に置いているだけなら問題ないのだが、ライブラ1のクズ男 ザップが

あろうことか、それを物色しているのだ。

たまたま近くにいたレオが、注意してくれているが…



「ちょっとくらいいいだろ〜? てかあの女、人間じゃねェし」


「そういう意味で言ったんじゃないっスよ…!!」



全くもって聞く耳持たず。


因みに超小声で話している彼等だが…



「(何やってんだあの2人は…)」



アルシュネムトの右隣(デスク側)のスティーブンが めざとく発見し、そして呆れる。

逆側のK・K 入口近くのチェインとギルベルトも気付き、中には溜め息を零す者も。



『……ん…?』


「…?」



さすがに集中や考え事をしていたメインの彼らでさえ、視線を向ける。


ちょうどザップが、光刀を鞘から抜こうとしているのが かろうじて見えた所で。



『っ…!?』



何気ない行動に対し 唯一それがどういう事態を引き起こすのか、理解している女は目を見開いた。



『その白い刀を抜いてはダメよ!!!』


「「「!?」」」



瞬時に立ち上がり、いつも落ち着いている彼女らしくない大声で叫んだ。


しかし、時すでに遅く。



「え…?」



周囲の者が驚く中、ザップの手は止まらなかった。



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