-陽竜志昇記-

□第0回 プロローグ
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むかしむかし、ある村に男の子がおりました


幼き頃に親を亡くした彼は 村の人々 皆【みな】に愛され 真っ直ぐで優しい青年に育ちました


ある日 狩りに出かけた青年は 森で不思議な生き物と出会ったのです

白い体に一面の鱗 大きな翼に尖った口

なんと 真っ白な龍だったのです


雲の上にあるという仙人界を飛んでいた白龍は 偶然浮岩の落石で翼を痛め 落ちてきたのでした

青年は最初驚きましたが その後覚えている限りの知識で 森を駆け巡り 薬草を集め 調合し 龍の翼へ塗りました


毎日毎日森へ訪れ 薬を塗ったり 食べ物を持ってきたり 話をしたり…

数日後に傷は塞がり 白龍は元気になりました


再び飛べるようになった龍は 青年に感謝し 彼が危機に瀕した時、必ず助けると誓い 空へ帰っていきました


そして数年経ち 大人になった彼は 不治の病に罹ってしまうのです

死を悟った彼でしたが ある日の夜 そこへ再びあの龍が現れ 約束を果たしに来たと言いました


なんと白龍は 自らの心臓を抉り 男の心臓へ重ねたのです

元々寿命の近かった白龍は 彼の優しさに触れ 彼の為になりたいと伝えて


大きな心臓ではありましたが 徐々に溶け込んでいき 全て入った瞬間 龍は光り輝いて消えてしまいました

空を統べる王であった白龍は 黒い闇夜へ上がり 瞬く星のひとつとなったのでした


その後 みるみる内に元気になった男は 白龍の生き様に恥じぬ様 精一杯村に尽くしました

しかし 龍の心臓を与えられた彼は 不老不死と言わんばかりに

歳をとることも無く 何年も何十年も生き続けたのです

次第に気味悪がった者達が男を村から追い出し 孤独となりました


死ぬに死ねず 白龍を恨みそうになったその時 ひとりの女性と出会うのです


彼女は 共に仙人界へ来ないかと彼を誘いました

なんと彼女は仙女だったのです


行く宛もなく しばしの思考の末 頷いた彼は空へと昇り 仙女と幸せに暮らしましたとさ



【おしまい】

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