-闇の血の戦乙女-

□2.【闇と希望】
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『うーん、やっぱり微妙ねぇ〜…なんか毒でも入ってそうな……ま、流石にもう慣れたけど』



イギリス郊外にある、小さな町の そのまた外れ。


この時代の道というのは、人が通る為だけの 今でいう田舎道。

木々がぽつぽつと生え、たまに民家がある程度。


その中で、葉の多さから大きく影ができ 日光が差し込まない大木があった。


根元に、黒い人影。

言わずもがな アルシュネムト・メリオローデだ。


彼女は木に寄りかかり、片膝を立てて座っている。

傍には以前使っていた 鞘も柄も鍔も黒い刀と、これまた黒い傘。

この傘は洋傘ではなく、日本伝統の和傘だ。

後は日用品でも入っているのか、肩掛け鞄と。


今何をしているかといえば、口の中から音がする。

飴でも転がしている様だ。



『…でも、文句なんか言ってられないわよね。

 約束を破るなんて事、人…じゃあないけど やるつもりはないし。


 “彼”とは、争いたくないもの』



飴の味についてだろうか、意味深な言葉を零すアルト。

表情は、どこか儚げである。



『とりあえず、この前30人ほど殺ったし 血もちゃんと“補充”できたから、良しとするわ』



彼女が勢いよく噛み砕いた事で、少し外に落ちた飴玉。


その色は、数日前 食屍鬼街【オウガーストリート】から消えた“赤”

つまり【血】だった。


あの日 血液だけが消えた原因は、ディオの推察通り 彼女の所業である。

しかし、どうやったかまでは彼も分からなかった。


それもそのはず。

そもそも人間業ではないのだ。

そして“人間でもない”のである。


アルシュネムト・メリオローデの正体は、ハッキリいうと吸血鬼。

吸血鬼の詳細は、7年経てば出てくるので ここでは語らないが。


問題は 彼女が血を吸う化け物だという他、アルトがもつ特異な能力である。


【血液】を別の表現にすればなにか。

ズバリ“液体”である。


その液体をどうしたか。

飴玉…つまり“個体”


特異な能力は【水】を自由自在に操れるものなのである。


だが…それだけではない。



『ふぅ…いくら町の外れでも、ここ最近ずっといたら怪しいわよね。

 そろそろ移動しましょうか……よいしょっと』



なんか年寄りみたいな…とか言うのは置いといて、

立ち上がり、たて掛けていた刀の鞘に付いたベルトを巻く。

鞄を肩にかけ、次に番傘を手に取り 開いて差した。


そして、影から出る。



『ん? なんか違和感…ってあらあら、手袋忘れちゃってるわ。


 …少しなら大丈夫だけど、あまり“当たりすぎる”と流石に危ないからね』



傘をさしても、全ての日光を防げるわけではなく。

陽の光が手に当たる感覚に気付き、黒い手袋をはめた。

少なくとも1分は当たっていたのに、アルトの手はなんともない。

吸血鬼なのに、だ。


これが、もうひとつの能力。

【闇】が好む色は“黒”であり【黒】もまた“闇”を宿す。


力の根源は【闇】

影や黒い物から闇の力を引き出し、日光から身を守っているのだ。


口ぶりからして、完璧ではないようだが。


ここまでの能力を持っている彼女は、後に現れる吸血鬼より断然上。


だからこそ、100年も生き続けてきたのだ。



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