-奇石のすべは奇跡を生み出すか-

□Crerk.1【湿原の生命樹】
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‘クフフッ…ウフフフフッ…アッハハハハハ…’


『…なんだ…この声…』


‘オギャー!オギャー!オギャー!’


『今度は…赤ん坊…?』


‘キャアァァァァ!! 助けて、誰か助けてぇぇぇぇ!!!’


『うっ…頭が痛い……何なんだこの声は…!』


───…リ………お………!───


『…! 扉…扉が見える……あそこに行けば───

───マリ!!───


『っ…!?』



* * *



「もぉ〜…いつまで寝てるの? マリ…」


『…ル・ジェ…』



カラコロ…と軽やかな車輪の音が響く、ある街道。


青くて丸い草食動物 パパオの引く馬車の荷台で、彼女は目を覚ました。



「出発してからお昼過ぎたのに、ぜんっぜん起きないんだから!」



蒼い長髪に 露出度高めな服に身を包む女の子 ル・ジェ。


種族は「我」の民 セルキー。

己を第一に考え 身軽な者が多いので、盗賊として名を馳せる人もいる。


彼女の場合は 少し乱暴な面も多いが、故郷の特色もあり 仲間思いな所もちゃんとあります。



「まぁル・ジェ、マリは昨日の戦闘が響いてるんですよ。

 私達のために頑張ってくれたんですから、もう少しくらい休んで貰っても…」



荷台の外、パパオの手綱を操る 曲がった一本角のついた仮面に 人ではない手足と尻尾の青年 シーベーグ。


種族は「智」の民 ユーク。

彼の不可思議な容姿は、仮の姿であるから。

魔力に秀でているユークは 魂のみの存在であるが為、このような姿をとっているのだという。


因みに実家が(この世界での)錬金術師だからか とても研究熱心で、

頭はいいが、たまにおちゃめ(?)な実験で仲間を振り回すこともある。



「えぇ〜! でもマリじゃないと、裁縫のノウハウ分かんないでしょ!?

 村に帰るまでに母さんからのノルマ仕上げないと、吊るされるのよ!!」


「…どうせバレても吊るされるくせに」



ル・ジェの実家は裁縫屋。

しかし跡取りにしてはこれっぽっちも腕が上達せず、母親に叱られる日々。


そんな彼女を呆れた目で見るのは、身長は低いものの 槍を携え 立派な鎧を着る女の子 クレア=ギルダ。


種族は「武」の民 リルティ。

赤と黄のグラーデーションに、頭頂部のみが長い髪型なのは 種族的特徴。


実家は鍛冶屋で、既に1人前の仕事をこなすクレアは ル・ジェと度々喧嘩することが多かったり。



「何か言ったぁ!? ナイト・オブ・タマネギ!!」


「また言ったわねこの牛乳女【うしちちおんな】!!」


「また始まった…」



他にも多々理由はあるが、やはり喧嘩が始まる。



「ちょっちょっと2人とも…マリの身体に響くし、落ち着こうよ───

「「フォックスは黙ってて!!」」


「えぇ〜…」



止めに入ろうとした、茶髪の男の子 フォックス。


種族は「温」の民 クラヴァット。

4種族の中で温厚であり、争いごとを好まない考え方。


パーティの中に1人いれば 雰囲気を和ませてくれる…のだが、女子の圧力が強く。



「だめだめクポ…」



彼の傍で翼を羽ばたかせ、宙に浮く 丸々した白い生き物 モーグリのモグ。

フォックスの家に住んでるようなものなので、気心の知れた仲。

ついでにツッコミもこなすので いると助かる。



『…フッククッ……全く、お前達は…』



今まで黙って成り行きを見ていた女は、遂に笑い出した。


他の者達より 年長者と伺える容姿。

髪は腰に至るまで長く 色は水色と、毛先だけ茶色。

まるで ル・ジェとフォックスの色を足したような。

それだけでなく、瞳は右が黒 左が緑。


理由は 彼女 マリ・ヒンが、2種の血を持つハーフ。

【クラヴァット】の母と【セルキー】の父の間に生まれた者だからだ。


出産して間もなく 母親は死去し、残った父は娘と共に 自らの故郷「ルダの村」へと赴く。

しかし「我」の民というだけあって、男はまだしも 狭間の娘は疎がられた。


そして8年経ったある日、父は病気で 突然母と同じ元へ。

守ってくれる人間が居なくなり、マリはいとも簡単に村を追い出される。


元々離れ小島にあり 脆い船に無理やり乗せられ、転覆の危険に何度も遭遇しながらも 大陸へ座礁。

海岸に倒れ 薄れゆく意識の中で死を覚悟した少女の元に、ひとりの老人が駆け寄り 助けてくれた。

彼こそが マリ達の住む「ティパの村」の村長であり、育ての親。


そして、マリ・ヒン、ル・ジェ、シーベーグ、クレア=ギルダ、フォックス。

彼女等は「クリスタルキャラバン」


つい数ヶ月前まで この世界に蔓延していた瘴気から故郷を守るため【ミルラの雫】を求めて旅をする者達の総称。

現在は根本の原因を絶ったため 平和になった世界を観て廻ろうということになり、旅を続けて 今に至る。



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