-黒赤天使の羽は何色?-

□Story.3.5【命懸けの運命】
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「お疲れーい!」


『わー!ありがとー、えーっと…リンドーにぃ!』


「待て待て、リンドウは俺だ」



一足先に ロビーへ集まっていた先輩ゴッドイーター達。


数刻して、新人の子供が降りてくる。

しかし 迎えてくれたお兄さん的存在が2人もいるので、名前を間違えたイスカ。

といっても特に気にしておらず、少女の頭を撫でるリンドウとハルオミ。



「………」


「どうしたんだ?ソーマ」


「…別に」



ぐりぐりと髪がぐしゃぐしゃになるくらい撫でられ『きゃー!』と楽しそうなイスカ。

そんな彼女をじっと見つめる少年の様子を、不思議に思う 歳の近い先輩。


理由を悟った女隊長が うっすら口角を上げるが、誰も気付かず。



「イスカ、ソーマ」


『はーい!』


「…だから引っ張るな…」



キリのいいタイミングで、ツバキが2人を呼ぶ。

彼の袖を掴んでの移動のため、このまま続くと服が伸びるだろう。


勿論気付いていない少女だが。



「お前達の戦い方、存分に見させてもらったぞ。

 まだ少し危うい所はあるが、基礎訓練期間は必要無いと判断した。

 よって、近い内に初任務を組む。異論はないか?」


『“いろん”てなに??』


「言いたい事、という意味だ」


『ないー!』


「………」



並んだ子供が 片方は笑顔で左利き故の敬礼もどき、片方はそっぽを向いて無言の肯定。

どちらにせよ 文句もない様なので、リーダーは「ふむ」と零して2人を撫でた。


さっきから撫でられっぱなしのイスカと違い、慣れていないソーマは外れようとする。

しかし逃がさず、ツバキは膝を折り 目線を合わせた。



「私達はこれから仲間だ。

 確かに実力は申し分無いにせよ、戦場に出てまで完璧にこなせるわけがない。

 無理をせず、頼るように。これは リーダーとしての命令だ。


 改めて、これからよろしく頼むぞ」



厳しい印象の彼女が、子供達に初めて笑った気がする。

驚きから、ほけー…としている少年少女と 後ろの男達でさえも。


同時にイスカは、同性に優しくされたのは これが初めてだった。

ソーマも母親と死別し 年上の女性でまともに話すなど無かったので、言い表せない気持ちが 心を満たす。



『りょーかい!』


「…了解」



満面の笑みで 真っ直ぐ目を見て、それぞれ返事。


フェンリル極東支部に入隊しての初命令は、15にも満たぬ子供達への気遣いだった。



───こうして、義務への1歩は 幕を閉じた。


次の幕開けは、年明けの初任務。



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