-黒赤天使の羽は何色?-

□Story.3【大切な約束】
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イスカとソーマが出会ってから 数日後。


とある訓練室にて。



〈それでは、ダミーアラガミを投入する。目標討伐数は、5体中…3体だ〉


『あい!!』



イスカは自らの神機を持ち、満面の笑みで返事をした。


彼女に適合したのは銃型の方で 種類はスナイパー。

後に【第一世代神機】とよばれるものである。


限られた空間の中、実際と同じように床から出現したアラガミ オウガテイル。

見た目は水銀の様だが、脅威は同じ。

数は先程ヨハネスが言った5体である。


短い黒髪の幼女は、怯むことなく神機を構え 赤眼を向けた。



『いっくよ〜!うちぬいちゃえ〜!!』



向かってきた1体に狙いを定め、バレットを撃ち込む。

合計3発の弾は、全てオウガの体を貫いた。



『いった〜い♪』



活動機能が停止し、霧散しながら消滅。

本物は強固なオラクル細胞のお陰で、何日か後に再び出現するが。

ダミーアラガミに、その心配はない。



『にた〜い♪』



続いて斜め右に銃口を向け、発射。

先程より威力が高めな為、2発で片付いた。



『さんた〜い♪』



今度は斜め左。

また威力を上げて、たった1発で倒した。


残りは2体。

というところに、彼女の背後から大口をあけて迫るオウガ。



『よっとぉ!』



振り向かずとも気付いたイスカは、前方へ跳躍。

滑空中にも関わらず、標的を見失い 右往左往している怪物へ神機を向ける。


身体を曲げ、脚の間に顔がある状態。

景色は逆さのまま、引き金を引いた。



『よんた〜い♪』



1発のレーザーバレットは、脳天を貫く。

断末魔がとどろき、その場へ横に倒れた。


残り1体を残し、イスカは片膝をついて着地。

そこへ再び、後ろからの奇襲。


同じ事は二度しない。

ジャンプはせず、持ち上げるようにして神機を構える。

銃筒を後ろに、アラガミへ向けて。



『ごた〜い♪』



最後に重たい1発を放つ。

頭を吹き飛ばされたオウガテイルは、静かに崩れ落ちた。



『お〜わ〜り〜!!』



全てを片付けた少女は、年相応の笑みを見せる。


足元に ダミーアラガミの残骸が飛び散るという、異様な光景の中で。



* * *



「(まさか、数日でここまでの成長力とは…)」



独り、それを見つめていたヨハネス。

彼女からは確認できないが、目を細め 若干眉間を寄せている。


イスカの成長速度は、計り知れないものだった。

精神の問題はともかく、戦闘に関しては 知識をどんどん吸収。

同時に 身体能力や反射神経の向上。

背後の敵に感ずいたこともそうだが、ジャンプ力すらも大人以上。


いくら神機によるオラクル細胞のお陰だとしても それを確実に上回っている。

彼女は心が未熟…成長中であるが故に、大人になると簡単に出来ない 本能的な戦いを常に実行しているのだ。



「…ハハッ、素晴らしい…!素晴らしいよ…イスカ…!」



訓練場内へのスピーカーを切り、顔に手を当てて笑う男。

隙間から見える琥珀の瞳は、ただただ不気味で。


誰も、まだ知り得ぬ狂気を秘めていたような気がした。



*
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