-黒赤天使の羽は何色?-

□Story.2【死神と天使の出会い】
4ページ/4ページ




「イスカ、ちょっといいかい?」


『なぁに〜?』



ふとした頃、今まで黙っていたヨハネスが イスカに声をかけた。

彼を慕う彼女は 疑いなく振り向いたが、近くにいたソーマは…



「………」



自らの父親を見る目は、疑いの感情が籠っていた様にみえた。



「ソーマにはもう言っているんだが……イスカ、この世界には“神”がいると 前に話したね?」


『かみ?えっと……あ、アラガミ??』


「その通り。

 アラガミは突如世界に現れ、我々の全てを食い尽くしていった。

 街も 人も 大地も 何もかも全て。

 人類の作り上げたどの兵器も、奴等には敵わず散っていった。

 我々はあらゆる研究に没頭し、為す術がないか日夜探し続けた。


 …そして、誕生したのが“ゴッドイーター”だ」


『…ごっど…いーたー??』


「…イスカ、君に…ゴッドイーターになってもらいたい」


『……んえ?』



続く言葉など、何となくであれ予想できたであろう。

この男が、世界のために彼女を…イスカを巻き込むことを。


自分がそうだったからこそ、ソーマは信じられないものを見る目で父親を見上げた。

サカキはいつもの糸目で無言だったが、眉間に少し皺が寄っている様に見受ける。



『イスカ…が?ゴッドイーター…に??』


「あぁ、そうだ」



本人はまだ幼いからこそ、一言では意味がわからなかった様で。



なんとか理解した後、どこか一点を見て考えている。



「…!」



ふと、少女が動いた。


イスカが横を見た先には、ソーマがいる。



『…ソーマも、ゴッドイーターになるの…??』


「……あぁ」


『…そっか』


「(…コイツ……)」



ソーマは彼女からの質問に、間を空けて答えた。

なんとなく、巻き込みたくないと思ったから。


イスカはその気持ちを汲み取ったのか取っていないのか、少し眉を下げて答える。

ソーマもそれに勘づいたのだろう、怪訝な…でも少し辛そうな瞳を向けた。


少女は再びヨハネスに振り向く。

決意を瞳に込めて。



『……ヨハンパパ、イスカ ゴッドイーターになる。

 ソーマは、イスカに“よろしく”おしえてくれたから…それに、なんかおもしろそう!』



“ゴッドイーターになる”と、はっきりヨハネスへ宣言した彼女。

最後はちょっとゆるい感じだったが。



「お前…ゴッドイーターになったら、いつ死ぬかわかんねぇんだぞ。

 きょうみ本位でとやかく言えるはなしじゃない。

 …わかってんのか?」



彼の予想通り、なると言い出したイスカに ソーマは半ば冷たく問い質す。

彼女の境遇・見た目を考えれば、自分と同じ“経験”をするのが目に見えていた。


…だが、イスカの瞳から 光はきえない。



『…イスカ、イスカとおんなじような“じっけん”で、ひとがかんたんにしぬとこみたことある。

 でも……だから、つよくなるんでしょ?』


「…!」



見た目と歳は7歳、でも中身は4歳程度の子供。

なのにもう 人の死に触れており、意味が分かっているからこそ“強くなる”という選択肢を選んでいて。


ソーマも、ヨハネス達もまた これ以上何も言わなかった。



「よく言ってくれた、イスカ。明日から訓練が始まるから、頑張ろうね」


『うん!』


「………」



イスカの頭に手を置き、笑みを浮かべた支部長。

ソーマはその横で、あいも変わらず父親を睨む。


「(…ヨハン、君は……彼等も巻き込んでしまうのかい…?)」



少し離れた所から、サカキは糸目で心配そうな顔をする。


ほんの、ほんの一瞬だった。

ソーマやサカキも見ていた筈なのに、見逃していた。


ヨハネスが、一瞬妖しげに口角を上げた事を。



───こうして、2人の出会いは幕を閉じた。


次の幕開けは、訓練が始まった数日後のお話。



*
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ