-[自由]という名の進むべき道-

□Episode.2【預言なき絶望】
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『…!?』


《!?》


《なんだ!?》



その意志に呼応するかのように、突然宝玉が光り輝く。


あまりに強い眩しさで、男達の動きは止まった。



『(ふしぎ…めがあけられないほどのあかるさのはずなのに…

 …ぜんぜんあつくない…むしろ…あたたかい…)』



しっかり抱きしめていたリッシュには、肌から伝わる心地よい感覚が。

まるで持ち主を守ろうとしているかのような、温かいものだった。



『っえ…ちいさく…?』



輝きが終わりを迎えた瞬間、

両手でかかえるくらいの大きさだった 第七核【セブンス・コア】が、掌に乗る飴玉くらいまで縮んだのだ。


ふと、何かを思いつく。



『(このおおきさなら、てきからまもりやすくなる……そうだ…いっそのこと…!)』



グッと拳をつくり、覚悟を決める。


次には…



《なっ…!?》


《やめろ貴様!!》



第七核【セブンス・コア】を、口の中へ放り込んだのだ。

黒装束達は、慌てながらも少女に迫ってくる。


しかし、それよりも前に リッシュは飲み込んでしまった。



『っ!? あっ…!』



すぐに体がおかしくなる。

心臓が痛いくらいに鼓動し、鎖骨辺りが火傷をしたような熱さに。



『うっ…ううっ…!』



痛みに耐えるため、目をつぶって 蹲【うずくま】る。


だが、彼女の意思と関係なく 地面に譜陣が出ていたのだ。



《譜術だと…!?》


《しかもこの譜陣は…第七音素【セブンスフォニム】の…!!》


《一旦下がれ! このままでは巻き───》



狼狽え 後ずさる男達を逃がすまいと。

リッシュの声で、譜歌が響き 詠唱は完了した。



‘『グランドクロス』’



少女の口から発せられたはずなのに、何かの声も重なっている。


それに気付いた頃には、空に光の十字架が表れ 悪しき者に天罰が下った。


住宅地はとっくに過ぎていたので、誰にも悟られる事なく 沈む。



『ハァ…ハァ…ハァ……?』



行使した代償か、発動しただけで息が上がる。

しかし本人に自覚はなく、何故こうなっているのか 理解していない。



『いま…いったい、なにが…?

 ひっ…!?』



突然 どっと疲れが身体にあらわれたと思ったら、周りに大人数が倒れている状況。

恐怖と困惑で震える。


だが今は、そんな場合ではない。



『…あっ…だめだ…こんなところでじっとしてたら…ふね…ふねにのらないと…!』



父と母との約束。


生きることを、あきらめない。



『はっ…はっ…ふね…あのしろいふねに…!』



フラフラと足取り揺れながらも、船の甲板から 積荷のあふれる中へと入る。


幸い、乗組員が起きることはなかった。



『えっと……あ、あそこなら…!』



四角い木箱や 丸い樽がひしめくその内に、子供がやっと入れる隙間を発見。

手持ちの刀もなんとか引きずり込み、周りを確認して、一息ついた。



『はぁ…はぁ…はぁ…』



背の箱に頭を付け、上がった息を零す。

肉体的にも 精神的にも疲労が溜まり、満身創痍の状態なのだ。



『ん…ねむ…い……───』



次第に 瞼が下りてくる。

逆らう力が残っていなかった少女は、斑【まだら】を傍らに置き 床に丸まった。


泣いてぐしゃぐしゃになった顔のままだが、ひとときの休息。

痛みが走った鎖骨の間に、第七核【セブンス・コア】と同じ紋様が浮かび上がっていただなんて、気付かずに。



───こうして、悲劇の連鎖は幕を閉じた。


次の幕開けは、知らぬ土地での出会い。



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