-[自由]という名の進むべき道-

□Episode.1【焦がれし者の日常】
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彼が伝えられた通りに話した、昔の話。


今から約2000年前 始祖と呼ばれたユリア・ジュエは、ローレライと契約し、預言【スコア】を残した。

世界中の人々には 一般的にそう伝わっているが、

アーディラ家・マルクト帝国 代々皇帝・ローレライ教団 代々導師にだけは“もうひとつ”伝わっている。


それが、影の騎士 リュムテ・ワンドルの行い。


友の力となる為に、自分の未来を差し出した。

実際に彼女の一族であるアーディラ家は、全員自分達の 預言【スコア】を見ない。

ローレライ教団の保有する 預言【スコア】の中に“刻まれていない”からだ。


「貴族であって貴族でない」の本質は、一族を守る為に 皇帝が取り決めた役職。

いわば、カモフラージュだったのである。

ホド島の民も優しく、不安定な立ち位置のアーディラ家を 咎めも疑いもせず交流してくれて。


このまま幸せに、何事も無く過ごせる筈だった。



「リッシュ、大丈夫か?」


『はい、おとしてないです!』



だって明日は、リッシュテルトの6歳の誕生日だから。



「よし、偉いぞ。

 それじゃあこのまま───

‘キャアァァァァッ!!!’


「『!?』」



豪勢なパーティーを 家族とメイドだけで楽しもう、と。



『い…いまの……メルラ…!?』


「っ、まさか…!?」



色々用意していたのに……何もかも、台無しになった。



「リッシュ! 私の刀を持ってきてくれ!!

 私はメルラと母さんの所へ行く!!!」


『は、はい とおさま!!』



時刻は既に12時を過ぎ、日付は変わっていた。

ウンディーネリデーカン・シルフ・58の日。


今日はこれから…壊れ始める。



───こうして、最後の日常は 幕を閉じた。


次の幕開けは、大切な人達との 別れ。



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