-孤独の戦士-

□code.3【昔と今での繋がり:後編】
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時は遡り、ネアには聞こえなかった側の状況は。



「これは…もう終わってる…? どうなってるんだ…?」


「嵐山隊、現着しました」



校庭に降り立った 鮮やかな赤の隊服に身を包む3人。

A級5位 嵐山隊 嵐山准、木虎藍、時枝充。

あと1人 佐鳥賢は、本日不在の模様。



《嵐山隊だ…!》


《A級隊員だ!》



「ボーダーの顔」ともいう、広報活動も担当している嵐山隊は 知らぬものはいないくらい。

そして美男美女揃いなので 人気は爆発的にありありである。



「アラシヤマ隊? ボーダーか」


「嵐山隊…!」



もちろん修も知らない筈がなく。

逆に遊真は知るはずも無い。


それから嵐山は 負傷者の有無を教師に聞いた。

ちょうど確認し終わったらしく 全員無事。

ほっ…と肩を撫で下ろす。


次に目が行くのは 事切れたトリオン兵。

校庭にある 遊真が一撃で仕留めたものと、ネアがバラバラにしたもの。

一体誰が倒したのか、というのは 見ただけで判別は不能。


修を小突いて促す遊真だが、当の本人は浮かない顔。

彼曰く、訓練生である三雲は 訓練以外でのトリガー使用を禁止されているのだ。


しかし黙っているわけにもいかず。

一歩踏み出し、嵐山に話しかける。



「…そういえば、おれが倒してないモールモッドがいる…誰が倒したんだ……レプリカ、分かるか?」



2人が話している間 空閑は疑問に思っていることを零す。

すると 耳元に にゅ〜っと小口が伸びてきて、彼の相棒 レプリカが答えた。



〈ふむ、残念だがその主は 生徒の中にはいない様だ。

 トリオンは感じるが、抑えているか 何かに邪魔をされて、特定出来ない〉


「ふーん…ボーダーのやつかな」


〈それは分からない。

 しかし相当の手練であることは、ここにあるものと 屋上で貫かれていたものを見れば断定できた〉


「へぇ…そっか」



強い者がいる、という事実だけでも 遊真は楽しく思えた。

因みに前では修が、

「ですが、バラバラになってる 近界民【ネイバー】は倒してません…」と、嵐山への説明に付け加えている。


実はその人物が 探せば見つかる所にいたのと、自らの友だったなど 2人は知らない。


話を戻して、叱られると思っていたメガネ少年に待っていたのは 賞賛と感謝だった。

嵐山にとって、大切で大好きな弟妹達を助けたも同然なのだから。


しかし 鮎が危惧していた通り、キツイ言葉を浴びせたのは木虎で。

しばらく 処罰がどうの 人を助けるのに許可がいるのかだの、木虎と遊真の言い合いが続く。



「はいはいそこまで」



果ての見えぬ争いを止めたのは、嵐山隊の 時枝充。



「現場調査は終わった。

 それにさっき 沢村本部長補佐から連絡があって、そこのバラバラになってる1体と 屋上の1体

 他 形は残ってないけど3体は、殲滅処理課の“ネア”さんが倒したもので、後の2体は三雲くんによるものだって。

 回収班呼んで、撤収するよ」


「!? ね、ネア…さんが…!?」



【ネア】という名前を出した途端、明らかに顔が驚愕の色に染まった木虎。

報告としては 今ここで言うことでもなかったのだが、彼女を止める材料になると思ったのだろう。

できる男 とっきーの手腕である。



「(ネア…? だれだそれ…って、そうか。

 そいつが他のモールモッド倒したんだな…へぇー…)」


「(殲滅処理課、って…噂には聞いてたけど 本当だったんだ…!)」



掃除屋のことを何も知らないが 謎が1つ解けた遊真と、噂程度は知っていた修。



「三雲くんの賞罰を決めるのは“上”の人で、オレたちじゃない…ですよね? 嵐山さん」


「なるほど! 充の言うとおりだ!」



それから話は戻り、三雲は本部に出頭 報告は嵐山隊からしておくことになった。

隊長曰く 出来る限りのフォローをしてくれるとか。


そして、嵐山隊が撤収しようとした時…



「兄ちゃん!」


「…! 佐補、どうかしたのか?」



准の妹 嵐山佐補が、兄を引き止めた。



「…嵐山さん、オレ達先に帰ってますね」


「あぁ、ありがとう!」



時枝は気を利かせ、木虎と先に本部へ帰還。

背中を見送った後 嵐山は佐補と 傍にいる副に向き合った。


因みに修や生徒達は 既に校舎へ戻り始めている。



「兄ちゃん、私…兄ちゃんに言ってなかったことがあって…

 実は今日、怪我はしなかったけど 近界民【ネイバー】の下敷きになりそうだったの」


「何だって!? なんで言わなかったんだ!! 本当に怪我してないのか!? 副は!?」


「「ちょっと兄ちゃん落ち着いてよ!!」」


「…! あ、あぁ…すまない」



弟と同じ…いやそれより激しく(?)、身体をぺちぺち触られる妹。

兄の行動を予想していたのか 2人で止める。



「とにかく、怪我は一切してないけど それには理由があるの。

 さっき話に出てた「ネア」って人が 近界民【ネイバー】を切り刻んでくれて…」


「…! バラバラになってるのはそういうことか…!」


「仮面被ってて怖い印象だったけど、俺達を気にかけてくれたんだ!

 だから、もう1度ちゃんとお礼が言いたくて…兄ちゃんなら あの人と知り合いかと思って…」



嵐山としては 謎がひとつ解けた。

ネアの腕は確かだが、普段から狂気的に解体しているわけではないので。



「知り合いもなにも、あの人は共に街を守る仲間だからな!


 分かった。俺からも礼を言いたいし、後日お前達と会ってもらえないかも頼んでみるよ」


「「ほんと!? ありがとう兄ちゃん!!」」



双子特有のシンクロした感謝。

最後に弟妹の頭を撫でて、嵐山は本部に帰還していった。


実はこの行動が 後に大きな“きっかけ”になるとは、誰も分からないのである。



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