-Sham Gud ulv-

□#eitt【聖戦の序:前編】
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本来、聖杯戦争のマスターは、サーヴァントを召喚できる者…つまり【魔術師】である。


一般人に値する、魔術を行使できぬ者は 選ばれる事はないのだが…



『…なのに、魔術師じゃない璃正の息子が マスターの1人に選ばれちゃった…って訳ね?』


「…そういう事だ。

 私は 監督役が保持する【預託令呪】で、宝具への魔力を補えているが……あ奴の場合は違う。

 息子が産まれる前に 第3次聖杯戦争の監督役になったおかげか、

 あ奴に魔術回路が備わっているのは理解していたが…今まで魔術に関連する事は、何も教えておらん。


 むしろ、私は正規の魔術師ではないのだから 教示できることなど 何も無いのだ」


『ふ〜〜ん……なるほどねぇ〜…』



現在彼等は、移動しながら話をしている。

マスターである璃正の後ろを、メリルが付いている形で。


理由は至極簡単。



『ねぇ璃正、今から会う魔術師って誰なの?

 それも璃正の息子に関係してる?』



これから人に会うためである。



「【始まりの御三家】遠坂家 現当主 遠坂時臣氏だ。

 息子にも、引き会わせようとしている人物なのでな」


『あぁ、遠坂家の……やっぱり毎回参加するのね』



彼も先程言ったが、遠坂…そして 間桐 アインツベルンは、

【始まりの御三家】と呼ばれる、名高い魔術の一族。

冬木の聖杯戦争のシステムを造り出したからこそ、色々と特権もあるとか。


それはさておき、教会の外へ出た2人は 敷地内の別棟へと入る。

客人を迎えるゲストハウスとなっており、高級感漂う作りになっていて。


邸内を進み、リビングになっている部屋の扉を開けた。



「お待たせして申し訳ない、時臣君」



入ってすぐ、お目当ての人物を視界にいれた璃正は、その人の座るソファへと近づいていった。


気配を感じ 立ち上がった男。

赤いスーツに、日本人とは思えない 水色の瞳の彼 遠坂 時臣。



「お気になさらないでください、璃正神父。

 それほど待ってはいませんよ」



振り返り、マスターと握手をした時臣。

前回の戦争で 璃正は彼の祖父と友交があり、知らない仲ではないのだ。



『(ふ〜ん、あれが“今”の当主か……いかにも【魔術師】って感じ)』



マスターより1歩後ろで、様子を眺めるメリル。


すると、時臣がこちらを向いた。



「おぉ……もしや、君が…?」



彼女が“何なのか”事前に聞いていたのもあったのだろう。

好奇心が含まれた瞳に切り替わる。


それと同時に 極微量の【蔑み】が含まれていたのを、長年の経験から 天秤の英霊は感づいていた。



『(…ま、慣れてるけどね……)

 …お初にお目にかかります、遠坂家当主 遠坂時臣様。

 我が真名は ヴァルキュリア・フェンリル。

 クラスはルーラー、マスターはこちらにいる 言峰璃正。


 どうぞ、お見知りおきを』



肩膝を立てて跪き 胸に手を当て、俯き下限に述べた。

心情に気付いたとはいえ 初対面であるし マスターの知人ともなれば、下手な態度をとるわけにもいかない。


そんな思惑などいず知れず、メリルの挨拶に気を良くしたのか、いつもの笑みが もっと濃くなった。



「顔を上げてくれ、天秤の英霊よ。

 中立の立場にあるとはいえ、私に敬意を示してくれたこと、感謝する。


 こちらこそ、よろしく頼む」



いわれて、上を向く。

すると彼は メリルに手を差し伸べていて。

挨拶+ちょっとした手助け、の意味なのであろう。


少し驚きながらも、その手をとって 立ちあがった。



「私のことは、自由に呼んでくれ。

 敬語も必要ない。

 …ところで、その髪は……耳、なのかね…?」


『あ、そっすか? じゃあ遠慮なく……あたしのことも、メリルって呼んでね 時臣。

 この髪? 多分フェンリルの影響だと思うけど、本物みたいに動いてるらしいのよね』



はにかみ、改めて握手をした彼女。

先の言葉に、敵意は感じられなったからだ。


それから数時間後、この教会に もうひとり訪問者が訪れた。



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