-神に愛されし者-

□第2夜【魔女の棲む村】
7ページ/9ページ




「そんな…それじゃあ本当の魔女じゃないですか!!」


「そうよ、千年伯爵と一緒に話したの。

 ここを本当の魔女の村にしようってね!!」



アンジェラの顔がどんどん歪んでいく。



「フフッ、エクソシストか…相手にとって不足は無いわ。

 アッハハハ! 現代の魔女の姿を見せてあげる!」



次の瞬間、アンジェラの顔にヒビが入る。

人間の顔から、異形の者の顔へと変貌していく。



「あぁぁ…」


『…神田…これって…』


「あぁ…Lv.2のアクマだ」



アンジェラの姿がLv.2。

つまり 自我とそれぞれ固有の能力を持った手強いものへと変わる。


姿はまさに“魔女”と言い表してもおかしくない風貌。

そして“魔女”は、三日月型の大きな鎌を取り出す。



「シナデ、ゴズ 逃げろ!」


『…っ…!』



神田はボーっとしていたゴズを突き飛ばす様に扉に向かい、シナデにも逃げるように諭した。

3人で雑貨店を飛び出した瞬間 アンジェラが扉を突き破り、こちらに鎌を一振りしてきた。



「うわぁっ!」



悲鳴を上げたゴズだが、大きい体の割に俊敏な動きで避けた彼に、神田は少し驚きながら問う。



「お前、何かやっていたのか?」


「えぇ、フットボールを少々!」


「成る程…」


‘アンジェラ、もう止めてくれ!’



後ろで誰かが叫ぶ。

振り返ると、そこにいたのは店主だった。



「私が悪かった…頼むからもう許してくれ、もう止めてくれ…


 これ以上、人が死ぬのを見たくない…」



店主がアンジェラを見上げながら懇願する。


そんな店主にアンジェラはゆっくり近付き、鎌を振り上げた。



「危ない!」



叫んだが、時既に遅し。

店主の腹に鎌が突き立てられ、血を流しながら仰向けに倒れた。



「あぁぁ…しっかりして下さい!」



ゴズは店主に駆け寄り、抱き起こして揺さぶった。

店主は辛うじて目を薄く開け、震える唇で言葉を紡ぐ。



「すまない…ソフィア…アンジェラ…守ってやれなく…て……───」



彼もまた 彼女達に謝罪し、その目をゆっくりと閉じた。


ゴズは泣きじゃくり、そしてアンジェラは逆に遺体を見て嘲笑う。



〈フフ…自分が起こした悲劇を見せつける為に生かしておいたけど…もう充分満足したわ〉


『…神幻奏歌【ミューズ・ファンタジア】……変幻…心弓〔しんきゅう〕…』


「六幻【ムゲン】、抜刀…」



シナデはイノセンスを発動し、その矢先をアンジェラに向ける。

神田も刀身を撫で上げて、構えながら慎重に近付く。


その時、ゴズの弱々しい声が聞こえた。



「神田さん…シナデさん……倒すんですか? 彼女を…」


『…はい…私達は…エクソシスト……アクマを破壊する者…ですから…』


「やめて下さい! 彼女は被害者でもあるんですよ!」


「馬鹿かお前は」



神田が吐き捨てるように言った。

ゴズは目に涙を溜めながら続ける。



「馬鹿でもいいです!

 俺も、これ以上人が死ぬ所を見たくないんです!」


「ゴズ…あれは人じゃない。


 “アクマ”だ」



神田が強調して答えると、ゴズは掴みかかる勢いで叫んだ。



「あんたには人の情ってものが無いんですか!?」


「じゃあここで黙って殺されてやるのか?

 いいから 探索部隊【ファインダー】は引っ込んでろ!

 シナデ、行くぞ!」


『…了解…』



俯いてしまったゴズを置いて、2人はアンジェラに向かって走る。

一方アンジェラはニヤリと笑みを浮かべた。



〈魔女の力、見せてやるわ…出て来い!〉



アンジェラが叫んだ途端、村の空気が変わった。

すると何処に潜んでいたのか、恐らく村人だった者…

アクマが、雑貨店の前に集い こちらに敵意の目を向ける。


その数…約50人以上。



「…村人全員、アクマにしてやがったのか」


〈フフフフッ…さぁ、そいつらを殺せ!〉



その声を合図に、村人達は襲い掛かってくる。


神田はゴズに逃げるように一声かけ、敵の前線に向かっていった。

シナデは後ろで、一体一体確実にアクマを射る。



*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ