-神に愛されし者-

□第2夜【魔女の棲む村】
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『…神田…この人…』


「あぁ…お前、探索部隊【ファインダー】の人間か?」


「は、はい…ゴズといいます。

 あなた方はもしかして…神田さんとシナデさんですか!?」


『…はい…そうです……私達の名前を…知ってるんですか…?』


「そりゃあもう!

 お二方の事を知らない 探索部隊【ファインダー】なんていませんよ!

 …あ、すいませんこんな時に…」



神田は他人を寄せつけない所が、シナデは逆に人目を惹き付ける所が。

それぞれで有名なのだろう。



『…いえ……貴方以外の…方々は…』


「…はい。

 仲間は2人共、さっきの男…アクマに殺されました…」


「…チッ」


『…そう…ですか…

 …!』



その時、シナデが何かに反応したようで、伏せていた顔を上げた。


彼女の異変に気付き、前にいた神田は振り返った。



「シナデ、どうし………チッ…」



彼も気付いたのか、言葉を止め 舌打ちを。

ゴズはそれに気付かず、話を続ける。



「命からがら逃げたけど、俺もうどうしようかと……情けない…

 目の前で仲間が殺されたのに、1人で逃げた挙げ句に迷ってしまうなんて───

「黙れ」


「え…」


「新手が来た」


『………』



ゴズが気付いた頃には、それぞれ斧や 鉈【なた】を構えた男達が4人、神田達を取り囲んでいた。


先程の事を考えれば、アクマである事は確実。

神田とシナデは背中合わせになりながら、戦闘態勢に入る。


神田は 六幻【ムゲン】を抜刀。

シナデは自らのイノセンスを発動する言葉を唱える。



『…神幻奏歌【ミューズ・ファンタジア】…発動…』



彼女の鎖骨中央にある、十字架のペンダントが光を放つ。



「何だ、お前等」



神田が確認とでもいう様に男達に問う。

問いの返事に、男達はほぼ同時に切りかかってきた。


神田はその場で1人の首を飛ばし、もう1人の男の体を縦に切り裂く。

シナデは上に跳びながら、形態変化の言葉を紡ぐ。



『…変幻…心弓〔しんきゅう〕…』



輝いていたペンダントは鎖骨から放れ、光りながら形を変えていく。

そして、大弓形態へと変化した。


弦を引くと 矢が手元に現れ、残っている内の1人に狙いを定め、放つ。

矢は外れることなく命中。

食らった男…アクマは呻き声を上げながら、爆発して消え去った。



「『(あと1体…!)』」



神田とシナデがほぼ同時に残った1人に武器を向けた時…



「た、助けて下さーい…」



ゴズがアクマの男に鉈を突き付けられていた。



〈動クナ、コイツヲ殺スゾ!〉



男は自分の盾にする様にゴズの背後に回り、神田達を脅している。

助けを求める目でこちらを見るが…



「…好きにしろ」


〈「え?」〉



神田の言葉に 2人はポカン…と口を開けている。



「好きにしろと言ったんだ」



気にせず 六幻【ムゲン】を構えた瞬間、男がゴズを神田の方へ突き飛ばした。



「(…チッ!)」



ゴズがこちらに倒れかけてくるので、刀を反射的に振り上げた。



「うわあぁぁぁ!」



その所為で反応が遅れ 前から覆い被さり、神田達は倒れてしまった。


アクマはそれをチャンスに逃げようとしたが、“彼女”がそれを許さない。



『………』



キリキリと音をたてながら弦を引き、背中を見せたアクマに狙いを定め、射つ。

勿論命中し、アクマは消滅していく。



‘……イ……ル…ク……’


『…!』



アクマが消滅する寸前、何か言葉を発したのを シナデだけ聞き取った。


神田達が起き上がった頃には、森には3人以外誰もいない。

それに気付いた神田は、すぐ彼女に駆け寄る。



「シナデ、アクマはどうした!」


『…破壊…した…』


「そうか… (怪我は無さそうだな…)」


『…それで…どうする…の…?』


「あぁ……この先にも、アクマがいるかもしれない。

 このまま村に向かう」


『…了解…探索部隊【ファインダー】の…人は…?』


「あ、あの…神田さん、すいませんでした…」


「…行くぞ」


『…うん…』


「は、はい…」



神田はゴズの方を見向きもせず、3人は村への道を進む。



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