極上彼氏の作り方

□保健室は危険な香り
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さて……。

此れだけ朝っぱらからやらかせば、当然次の展開は容易に想像がつく。

案の定、御姉様達からの放課後デートの御誘いが山の様だ。

っつ〜か、どれから行けばいいのか……。

どの呼び出しも、時間と場所がほぼ一緒だ。

どうせなら面倒だから纏めて来てよ……。

自慢じゃないけど、あたしは逃げるのが大嫌いだ。

どんなに恐くても、自分が間違ってないと思える時は特に。

昼休み、購買から戻って来たら、あたしの机の上には7枚の紙切れがあった。

どれも時間と場所しか書いてない。

あたしは、焼きそばパンを片手に其の紙切れ共を並べて検討する。

確実に4人は被るから、此れを合同デートにして……。




「ねぇ、あんた、其れマジで行く気なの?」


突然、頭上から声が掛けられた。

あたしを見下ろしてるのは、どうやら同じ1年生らしいが、どっかで見た様な……。

「言っとくけど、一応クラスメイトだよ。

其れから、焼きそばはみ出してる。」

そう言って、彼女はあたしの口元を指差した。

慌てて焼きそばを吸引しながら頭を捻る。

あぁ、クラスメイトだから見憶えがあるのか。

ヤバい。

名前が全く判らない。

そんなあたしの心を読んだかの様に、彼女は自ら名乗った。

「あたし、大原 朱音。

未だ覚えらんなくて当然だから気にしないで。

ま、あんたは有名だからあたしは知ってるけどね。

光坂女神でしょ?」

そりゃそうでしょうよ。

今や時の人だもんね。

大原さんは、あたしの前の席の椅子に座ると、其の背凭れに腕を乗せて言った。

「止めとけば?

アホらしい。

あんた、何もしてないんでしょ?」

あたしは、コロッケパンの袋を開けながら答える。

「だから行くんだよ。

何も悪い事してないのに、逃げる必要ないじゃん。」

「あははははっ!!

面白いね、女神って!!

あぁ、御免。

あたしの事は朱音で良いよ。」

彼女は未だ笑ってる。

何だか嵐の様な人だ。

そう思いながらも、しっかりコロッケパンは完食した。

「朱音ちゃん。

あたしはあんま笑える心境じゃないんだけど。」

「御免御免。

悪かった。

其れから、ちゃん付けは止めて。

キモいから。」

「あ、そう……。」

大原朱音は、かなり豪快な性格らしい。

喋らなきゃ結構可愛いのになぁ。

セミロングでストレートの髪は綺麗なチェリー・ブラウン系。

同じセミロングでも、ちょっと天パなあたしは、広がらない様に纏めなきゃいけないから羨ましい。

目だって、あたしと違って大きくてパッチリしてるし、体型もモデル並だ。

此れで同い年とは……。

何時も父にそっくりだと言われるあたしは溜め息を吐く。

母よ、何故もっとイケメンと結婚してくれなかった……。
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