苦労ポケMの憂鬱

□三苦労
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「兄ちゃんだ!
母ちゃん、兄ちゃん来たよ!!」


所変わってシコクの城下。
僕の姿を見た子供達がそれぞれ親に知らせに行く。
子供達の声に気づいた他の人達もわらわらと僕のところに集まってきてくれた。
やーやー、ありがとありがと。


「おう兄ちゃん!
いつもご苦労さん!」

「いいええ、留吉さんこそご苦労様です。
皆様、御贔屓にありがとうございます。」


ニコリと笑めば、町民さん達も笑み返してくれる。
いつ来ても気持ちのいい町だねぇ!


「さあさ、よってらっしゃい見てらっしゃいな!
菓子と薬の店"癒屋"、今日も元気に開店だよー!」


声を合図にお客さんが殺到した。
最初の内は大変だったけど、今は余裕でさばけるようになったよ!


「お兄さん、火傷なおしの薬はあるかい?」

「勿論。
どう、傷の具合は?」

「ここの薬つけてからみるみるよくなっているよ!
ありがとうねぇ!」

「兄ちゃん兄ちゃん、俺このお菓子欲しい!」

「はいはい、"ポフレ"な。
ん、きっちりと代金いただきました。」

「あたしは"ぽろっく"を貰おうかねぇ。
美味しくて、美容にもいいんだもの!」

「まいどあり!」


わぁ、もうシコク用のバッグ軽くなってきちゃった!
ありがたいことだなぁ。

ふと、遠くの方から声が聞こえくる。
うわぁ、来ちゃったのか!
逃げたいんだけど、あの人も大事なお客さんだからねぇ…。

溜息と同時に僕の目の前に影が降り立った。


「いらっしゃいソカベさん。
何をお求めで?」

「アンタだ。」

「傷なおしと包帯、あとはお酒のつまみのにがめのポロックね。
代金よろしく。」

「相変わらずつれねぇな。
ほら、足りてっか?」

「ひーふーみー…ん、ちょうどいただきましたっと。
ああ皆様に伝える事がありました!
こちらに来れる回数が減りますので、ご了承下さいませ。」


ざわめくお客さん方に申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、文句ならソカベさんにお願いします。


「えー!!
兄ちゃん俺寂しいよー!」

「ごめんねぇ。」

「そりゃあ、いきなりどうしてだい?」

「理由はいろいろありますがね、売り場を広げようかと思いまして!
なので、三日に一度のところを五日に一度に」

「許さねぇ。」


ドスのきいた声を発したのは言わずもがなソカベさん。
恐ろしかったのか、お客さん達が逃げてしまった。


「ソカベさん、何してんのさ!
子供なんて泣いてたじゃんか!
最低!巨体!半裸!」

「うるせぇよ!
アンタが悪ぃんだろうが!」

「責任転換やめてくださいますー!?
そして離せ!」


お生憎様、僕には男に抱きしめられたいって趣味はないですー!!
くそっ、背骨クラッシュするつもりかコイツ!
お客さん方は心配そうにこちらを見ていた。


「はーなーしーてー!!
僕、これから"アキ"ってところに行くんだから!!」

「なっ、安芸だと!?
じゃあ、尚更離す訳にはいかねぇ!!」

「ふざけないでよ乳首!!」

「ぶっ、その呼び方やめろ!!」

「黙らっしゃい!
乳首出してるやつに乳首って言って何が悪い!!
風邪ひいても知らないんだからな!
まだ寒いんだからきちんと暖かい服着なさい!!」

「乳首連呼すんな!!
あと、最後にオカン節持ってくんのやめろ!
テメェは俺の母ちゃんか!」

「誰が母ちゃんだ!」


もう我慢ならない!
申し訳ないけど、ソカベさんの腕に噛み付いて腕から逃れさせてもらった。
へへん、自由になったらこっちのもんだ!


「まっ…」

「さらばだソカベさん!
"ねこだまし"!」

「うおっ!?」


バチィンと音を立て、ソカベさんが怯んだ一瞬で逃走した。

最近解った事がもう一つ。
僕、技が四つ以上使えるみたいです。
さあ、いざアキへ!!


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