苦労ポケMの憂鬱
□二苦労
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ひゅるるるる、ばっしゃああんっ!
落ちた場所は水の中でした。
いってぇ、鼻の中に水入った!
あのバ神らは帰ったら殴るとして、まずは上がろう。
身体を震わして水を飛ばす。
さてここは何処だ。
見知らぬ森と見知らぬ滝。
空から見た景色は360度ぜーんぶ海。
どうもここは島らしい、それも小さな。
孤島か何かか。
『無事たどり着けたようだな。』
「おお着いたともさバ神この野郎。
で、説明してくれますよね?」
テレパシーで話しかけてきたバ神もといアルセウス様にイラつきながらも状況説明を求める。
飄々淡々と話すアルセウス様すっげーぶん殴りたい。
「ふぅん、この世界にはポケモンがいないんだ。
つまんない世界だこと。」
『そう言うな。
そして、この世界を簡単に理解しようとするならば"ランセ地方"のポケモン無し版だと考えるのが手っ取り早いだろう。
人同士が戦う世界のようだ。』
「全く、人ってのは争うのが好きだねぇ。」
虚しくないんだろうか。
ま、それは僕には関係ないから別にいいんだけどね。
それよりも、もっと聞きたい事がある。
「どうやってプレート探せと?
まさか、虱潰しに探せとは言いませんよね?
そうだったらギャラドスの餌にしてやりますよ。」
『落ち着け。
プレートが出現するときには必ず何かが起こる筈だ。
それを目印にすればよかろう。
早く見つけろ。』
「他人、いや他ポケに自分の尻拭いをさせといて随分と上からですねはっ倒す。」
『すまぬ。
闇雲に探しても見つからん、とりあえず何かが起こるのを待て。』
待てと言われてもねぇ。
仕方ない、この世界をちょっとでも知る為にしばらく探索でもするか?
『くれぐれも人に見つかるなよ。
先も言った様にこの世界にはポケモンがおらぬ。
見つかれば何をされるか解らぬぞ。』
「んなヘマはしませんよ。
あーあ、いつになれば帰れるんだか…」
こうなったのも全てバ神達のせいだ。
どうして関係のない僕が巻き込まれなきゃいけないんだ。
あの四人だけじゃない、他の伝説や幻達もそうだ。
いつもいつもいつもいつもいつもいつも、誰かがヘマをしたら必ず僕が尻拭いをさせられる。
否、しなければならない。
全員常識がズレているからアイツらに尻拭いさせると余計厄介な事になる。
僕の味方はビクティニとちびっ子達だけだ。
あの子達だけが僕を手伝ってくれる。
あ、思い出したら腹立ってきた。
いっそのこと、あの子とちびっ子以外の奴は無視しようかな。
うん、そうしようそれがいい。
『すまぬ、心から謝罪する。
帰ったら全身全霊で主に尽くそう尽くします。』
「絶対だな。
もし嘘だった時には本気で殺しにかかるからね。
僕が新世界の神になる。」
『間違っても黒いノート持った死神と契約するんじゃないぞ。』
「大丈夫、貴方の名前は一番初めに書いてあげますから。」
『どこをどう取ったら大丈夫になるのだ。
とにかくだ。
食べ物や住処はこちらでしっかりと用意した。
まあ、休暇だと思ってゆっくりと過ごしてくれ。』
「とんでもない休暇だわチクショウ。
もっと違う形でもらいたかったっつーの。」
住処があるという場所へ指示をもらい進んでいくと一軒家っぽいのが見えてきた。
一匹で住むのならば十分すぎる大きさだ。
家の裏には広い畑。
幾つか木が生えていて、それぞれたわわにきのみをつけている。
"モモンのみ"を一つもぎって食べてみたが、とても甘くて美味しい上質なものだった。
僕達ポケモンの主食はきのみ。
これは嬉しい。
『一先ず最低限のきのみは育てておいた。
それら以外のきのみは倉庫に置いてある故、食べるなり植えるなり好きにしろ。
他にも必要な物があれば呼びかけるがいい。
すぐに送ってやろう。』
「はいはいどうも。
んじゃ、さくっと見つけてやりますから首を洗って待ってろください。」
『…黙っていれば愛らしいのにな。』
「ほざけ。
テレパシー遮断してやる。」
何か言い出す前にテレパシーを遮断してやった。
さてと、早速きのみ埋めるか。
僕は倉庫に向かう。
頼むから早く見つかってくれよプレート君。
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