ガジレビ
□無意識の唇
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いつもと変わらず騒がしいギルドで、その中心から離れた場所に座る二人組。
ガジルとレビィだった。
魔導書をペラペラとめくる音と、鉄を噛み砕く音が、二人の日常を表している。
二人が恋人になってから、随分と経つ。
最初はどこまで進んだかとか、あれこれ聞かれていたが、最近は周りも慣れてきたのか、こうやって一緒にいても、何も言われなくなった 。
ふと、レビィがガジルに視線をやると、ある仕草が目に付いた。
本人はそれに気付いた様子もなく、無意識にしているようだった。
「ねぇ、ガジル」
「あ?」
「ちょっとこっち見て」
何だよ、と言うつもりでレビィの方に顔を向けた時だった。
フワッと良い香りが鼻をかすめる。
「…!?」
一拍遅れて、自分がキスをされた事に気付いた。
静かに離れた時、レビィはしてやったり顔を浮かべていた。
「…へへ、ビックリした?」
「あ、あぁ…」
「あれ、もしかして照れてるの?」
ガジルが珍しく少し動揺しているようだったので、ちょっとからかってみる。
「…お前からしてくる事、今までなかったじゃねぇか」
「んーそういえば…そうかも?」
「ったく、お前は…」
そう言いつつも、ガジルは微笑していた。
「そもそも、ギルドでそういうのダメって言ったのお前だろ?」
「そうなんだけど、こうすれば誰にも見えないかなって」
そう言って、レビィはガジルに顔を近づけて、魔導書で二人の口元を隠した。
「実はさっきもこうやったの。これだとみんなにも見えないでしょ?」
「ほーお」
そう関心すると、今度はガジルがレビィにキスをした。
それは触れるだけのキスで、離れるとガジルはペロッと舌で唇を舐める。
今度はレビィが照れる番となった。
「まぁ確かに、見えねぇし、こっちも気にならねぇな」
そう言って、ニヤッと口元を歪ませていた。
「しかしまた、何で急にこんな事思い付いたんだ?」
「それはガジルが………」
レビィはそこまで言って、その先を言おうとしなかった。
「俺がなんだよ」
「ふふ、いーの。何でもない」
「ちょ、おい。気になんだろーが」
「秘密よ。ひ・み・つ!」
レビィはごまかすように、ガジルの唇を指でなぞった。
その行動こそが最大のヒントであり、質問の答えだとは気づかずに…。
指で唇を撫でるその仕草。
それはあなたがキスを求めている時の無意識の行動。
魔導書がその為の手段に過ぎなかったと気付くのはいつになるやら…。
《完結》