ウォーターリリーの涙のワケ

□友達範囲の延長コード
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「ごめん、隼人くん」


「そんな顔するなよ乃彩」





空き教室。
綺麗な顔を困ったように歪ましている私はきっと有罪だ。

でも、私の気持ちはもうどうにも変わりそうにないから。






「私はやっぱりはじめちゃんが一番で、あとのことは本当にどうでもいいと思ってしまう最低な女なんだよ」






自嘲的に笑う自分が恨めしい。
こうやって傷ついているアピールをして自分の傷を最小限に抑えようとしている。
ここまで来て同情を買おうとする腐った自分の根性に吐き気すらした。

それでも本当にこんな表情しか作れない。







「だから隼人くんの気持ちには答えられない。ごめんね、でもありがとう」







決められたような言葉で頭を下げた私に隼人くんの手が肩に乗った。
ゆっくりと頭を上げる。






「いいんだ。わかってたことだしな。俺は自分の気持ちを言いたかっただけ、と言ったら綺麗すぎるか」






困ったように笑う隼人くんはやっぱりいつだって生まれ持った顔面の破壊力で私を見つめる。
どう考えてもこんな気のいいイケメンに告白されるのはこれが最後だ。

そう思っても揺れもしない心にため息が出てしまいそうだった。






「俺は少しでも俺の気持ちを知った乃彩がどんな風に困るか見たかったんだ」


「・・・え?」


「困った乃彩は面白かったな。俺のこと見つけたら逃げるし」


「ちょっと待って」


「でも結局靖友に相談するんだな」


「え・・・?」







隼人くんはさっきまでの困った顔はどこに忘れてきたのか楽しそうな表情を浮かべている。
しかも何故私が荒北に相談していたのがバレている・・・?

これは由々しき事態だ。






「面白がってたの?」


「んーどうだろうな。でも俺の気持ちに嘘はないな」







きっぱりと答えられたその答えに言葉が詰まる。
何度そう言われても私はその気持ちに応えられない。

けれど優しく頭を撫でられて視線を合わせれば、力なく笑った隼人くんと目が合った。






「深く考えないでくれよ。俺はオメさんが笑っていればそれでいいんだ」


「隼人くん・・・」







どうして私はこんないい人を好きになれないんだろう。
どうしてまた私は徹ちゃんに言わせてしまったような台詞を隼人くんにまで言わせているのか。

心がキリリと小さく悲鳴を上げた。







「だから、逃げないでくれよ。また俺と友達に戻ってくれないか?」







あまり目にすることのない隼人くんの真剣な表情に私は頷いた。
そんなのこっちがお願いしたいくらいだよ。

でも私からその言葉を言えなくてごめん、そして。






「隼人くん、私を好きになってくれてありがとう」






そう言えば、やっと隼人くんはいつもの笑顔をを私にくれた。
けれど、いつも通りに戻った隼人くんはいつものように爆弾を落としてく。






「乃彩は気づいてないだけで靖友のことが好きだと思うぜ」





それに即座に違うと言えなくなってしまった私ははじめちゃんを裏切っているのかもしれない。
そう思うと少し軽くなった気持ちがまたずっしりと重く感じられた。



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