ウォーターリリーの涙のワケ

□背中を押す煩雑な手
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「という訳なの」


「ちょっと待て。全然理解が追い付かねぇーわ」


「岩ちゃんは順応性が低いね!」


「黙れ、クソ及川」






目の前には頭を抱えたジャージ姿のはじめちゃんに、なぜかバニーガールに扮した徹ちゃんが黄色い声援を一斉に受けていた。
それをにこにこと見守るのはうちのイケメンエース隼人くん。

ここだけ以上に注目されてるのは絶対気のせいじゃないよね・・・。





「よろしくな!俺は新開隼人だ」


「君結構イケメンだよね、及川さんの人気奪おうとしてる?」


「そんなつもりはなかったんだけどな。それに君の方が何倍もイケメンだと思うぜ」


「乃彩、この男いいやつだよ!!」





煽てられてすぐに意気投合した二人は雑談を始める。
今度は私が頭を抱える番だった。

そもそも何故ここに隼人くんだけしかいないかと言うとあれだけ張り切っていた東堂くんは何故か昨日から熱が上がってしまい直前でドタキャンになった。




もしかしてこのまま中止になってくれるんじゃないかという私の甘い考えはやっぱりチョコほどに甘くて、何故か飄々と現れた隼人くんはさも当然という顔で同じ電車に乗り込んだ。
東堂くんのお姉さんのところに泊まるのは変わらないらしい。
初対面なんじゃないの?という質問は怖くて出来なかった。







「ついてきたバカはもうしょうがねぇな」


「ごめんね、はじめちゃん」


「辛辣だな、岩泉くん」


「そうだよ!!失礼だよ、岩ちゃん!!!」








それに酷く顔を歪めたはじめちゃんはこぶしを握り締めている。
あぁ、東堂くんだけでも置いてきてよかったと心の底から思った。
風邪をひいてくれてありがとう。






「あ、ごめん乃彩!!客引きしないとクラスの委員長に怒られちゃうから仕事戻るね!楽しんでいってね!!」


「うん、わざわざわ出てきてくれてありがとね」


「乃彩のためならいつでも駆けつけちゃうよ!!」


「ってことはまた彼女に振られたの?」


「そうなんだよ、クソ川だから仕方ねぇーけど」


「岩ちゃん!!!」






きれいな顔を少しゆがめて怒った素振りをした徹ちゃんだったけれど、本当に時間がヤバイらしくて怒りながら行ってしまった。
あとで徹ちゃんのクラスに行く約束をして。






「はじめちゃんは大丈夫なの?」


「おー。午前中死ぬほどお好み焼き焼いたわ」





その言葉を聞いて胸がきゅんとするのはどうしようもない。
私との時間を作るために頑張ってくれたのかと思うと走り出したくなるほど胸がむずむずとした。

それに汗を拭いながらお好み焼きを焼くはじめちゃんを想像するだけでカッコよくて照れてしまう。





「乃彩、お好み焼き食いたいな」


「…黙って隼人くん」




さて、そんなムードをぶち壊す隼人くんをどこに捨てようか。





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