会社のすゝめ
□社畜の拷問週間を世間はGWと呼ぶ!!
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一つ下の後輩が目の下真っ黒に染めて今にも何かを呼びそうな顔で俺に聞いた。
「先輩、GWってなんの略ですか」
ンなもん決まってんだろォが。
学生から社畜に生まれ変わったことを死ぬほど後悔する拷問週間だヨ。
「5/7の朝礼を始めます」
屍がちらほら見える事務所で行われる声だけの朝礼。
これで俺たちは毎日宗教染みた経営理念というものを頭に刷り込まれ、倒れるまで動き続ける。
「それでは経営理念のご唱和をお願いします」
指は残像が見えるほどパソコンのキーを叩いてるくせに頭の中は仕事一色のくせによく飼いならされた俺ら社畜は声を一斉に上げる。
『元気よく挨拶!お客様の笑顔は私の幸せ!幸せになるために今日も一日お客様に笑顔をお届けします!』
16連勤でまだ少し余裕のある俺は隣の屍に目をやる。
今年入ってきた新入社員だ。
10人入った新入社員はコイツを除いて三日で辞めやがった。
それが普通だよなァ。
「では、次に社長あいさつです」
その途端バッと全員が席を立つ。
神様の降臨だから屍も社畜に戻る。
「いやいや、今年のGWもよく頑張ってくれたね。今日からはね、GW頑張って働いてたお客様がたくさん来てくれるはずだからGW終わったからと気を抜かず、より一層気持ちを引き締めて業務にあたって頂戴ね」
真っ黒に焼けたハワイ帰りの社長いや、神様のお言葉に社畜一同『はい!!!』と声を合わせた。
そして神様が下界(事務所)から天国(社長室)に行くのをお見送りしてまたけたたましく働き出す。
お土産もねェのか、あのハゲ!!!
悪態つきながら仕事出来る俺はもう飼いならされた社畜だ。
まだ社畜に染まり切れてない隣の屍の目と合う。
「荒北先輩・・・」
「知らねェ」
「・・・まだ何も言ってないです」
「俺はその答えをまだ探してる途中なンだよォ」
「逃げないで教えてください」
「ウッセ―なァ!!知らネって」
まだまだ社畜になり切れてない目の下におっきな熊を二匹も飼いならした後輩が俺に問うた。
「先輩…私もGW頑張って働いたんですけど、お客様に格上げされる呪文教えてください」
「社畜の呪文を唱えヨ」
「・・・幸せのためにお客様に笑顔を届けます」
「それでお前も立派な社畜だ。夢なんか見ることもなくなったはずだぜ」
「・・・先輩、私入る会社間違えました」
「気づくのおせぇーから、オメー」
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