飼育員系女子

□連れて行ってくれないくせに
1ページ/4ページ








予想以上に日が落ちてしまった。

夏休みが終われば段々と過ごしやすい気温になり、それとともに学校の中は文化祭、体育祭と立て続けに起こる学校行事に全速力で進行する。
私も例外ではなく、今日だって友達たちと共に文化祭の準備に明け暮れて帰る頃には夕方になってしまっていた。

今朝、仕事に出ていった左門さんからは「今日は遅くなると思うから、飯も済ませて寝ていろ」と連絡を受けた。それほどまでに忙しいのか。寝る間もないほどなのか。珍しい、といえば珍しい。彼はいつだって直ぐに事件を解決してしまうから。
仕事人間、とはすこしちがうかもしれないが事件さえあれば周りも省みず一人で突っ走る性格だったりするので、きちんとご飯を食べて休息がとれているのか心配になることもある。
あまり遅くなると私と顔を合わせる間もなく、遅くに帰り早くに出ていく。

そりゃまぁ、警察なんて仕事をやってれば勿論心配にもなるし。それがあの左門さんだから、必要以上に周りの人に迷惑かけてないかとかも心配になる。
まぁそんな心配、するだけ無駄なんだけどね。私は彼の仕事に介入することなんてないし。




……でもまぁ。

私はエレベーターから降りて家の数歩前で立ち止まった。
いや、立ち止まらざるを得なかった。









「鷹宮鈴菜さんですね。ちょっとお話を伺えませんか?」


警察手帳を広げたガタイのいい男の人とそれに続く数名の男の人に、訝しげな表情を向けて。

なんでこんな時間にただの一般の女子高生の部屋の前で待ち伏せするのだろうか。
警察、と名乗る男達に騙されたのはほんの少し前のことなので必然的に身構える。

ただ、私の中には、本当に静かに嫌な胸騒ぎがした。





「貴方の同居人である、赤城左門がつい先程逮捕されたので少しだけお話をお聞かせ願えますかな」



あぁ、彼らは赤城左門という人間が気にいらなかったんだろう。

天才で、一人で突っ走り、自分より優秀な成績を残す彼が。
人の成功を妬むような人間達なのだろう。


目の前の男達の下卑た笑いに私は笑顔を貼り付けた。








「すみませんが、何もお話することはないのでお帰り願えますか」




「………は、?」




私のこの言葉は予想だにしていなかったのか、目を丸くする男達。

私は笑顔のまま続ける。






「ていうか、邪魔なんでそこどいてもらえませんか?おじさん達」







私は、左門さんの不幸を喜ぶ様な連中のためにお話してやるほどお人好しじゃないっつーの。

左門さんは酷く信頼してるし、それ伝いに警察の人に知り合いが多いことも重なり、警察の人も信頼はしてるけどね。
だからって、それとこれとは話が別だ。
他人の不幸は蜜の味、というのも仕方のないことかもしれないけど、もう少しわからないように出来ないのだろうか。


私の言葉に目の前のおじさんが苛立ったような顔を晒したのはそのほんの一瞬あとのことで、「おぉっと」と心の中で反省はせずとも後悔をちょっとだけした。















.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ