飼育員系女子

□きみが描いたちいさな楽園
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(赤城side)






お待たせしました。とさっきから何度も聞いた台詞で俺たちの前に料理が置かれていき、それぞれが好き好きに食べたい物を食べたいように食べている。

ローテーブルを挟んで向かい合うように置かれたソファは、それぞれがそれぞれを占領するように翠と青山が座っているし、カウンター席には奥から黒崎、山吹、キャップ、俺の順に座っている。カウンターの奥には先程から信じられない程ぽんぽんと料理を出してくる三枝さん。
こんなにもSTのメンバーが集まったのには、勿論理由があってキャップが翠のST滞在を大げさに喜び「今のうちに親睦を深めましょう!」なんてくだらないことを言ったのが原因だったりする。


「これ!このマフィン!めっちゃくちゃ美味しいんだけど!!」

「あら、このトルティーヤもかなり美味しいわよ」

「……」

「肉団子が美味い、ですか。それにしてもこの焼き串もなかなかですな」

「なんか今日、全体的に料理豪華ですよね」

それぞれがそれぞれ、好き勝手食べてる料理に感想を言っている中、俺は久しぶりに外で酒を口にして三枝さんの様子を伺った。
…どうも怪しい。
これだけの量の料理を、いくら準備してたとはいえ、俺たちと会話をたしなみながら酒と一緒にどんどん出してくるペースも早すぎる。キャップの言う通り見るだけで豪華だともわかってしまう料理の数々。
でもその答えも、怪しんでいた三枝さん自身が答えてくれた。

「今日は忙しくなると思ったんで、知人にアルバイトに来てもらったんです」

あぁ、成程。
奥でなにやら音がするのもそれのせいということか。へぇ!等と興味深そうに頷くキャップは放っておいて、つい先程目の前に出されたばかりの香味焼きにされた白身魚に箸を伸ばした。
たしかに美味い。……いや、待て。
これは。何処かで食べたことが…


「……三枝さん、そのバイトって」

「おや、流石ですね」

1本、指を立ててニコニコと笑いながら「一口で当てましたか」と楽しそうに笑ってまた奥へ消えてゆく。
俺の味覚が正しければ、この香味焼きは“自宅で”あいつが酒のつまみに出してくれるものと、とてつもなく酷似していて。
…三枝さんの様子から言って俺の感覚は正しいようだ。

そういえば、あいつは今日の昼過ぎ『今日は急遽バイト入ってくれって頼まれちゃったから遅くなるかも』なんて連絡が来ていた。つい、いつものバイト先だと思って深く考えなかったが、あの時間にはもう既にキャップが夜にSTメンバーで店に行くと三枝さんに伝えた後だったはず、つまり、急遽入ったバイトはもしかしなくても。




「流石に人手がないと辛いと思いまして、彼女に来てもらいました」


いけしゃあしゃあと告げた三枝さんは、絶対にふざけている。
いや、確かに俺たち全員の相手をするのは流石に人手不足かもしれないが。
三枝さんの後ろについてきた見慣れたエプロンを身につけた同居人は、相変わらずへらへら笑いながら呑気に口を開いた。


「臨時シェフの鷹宮鈴菜でーす」




……なめてるのか。




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