▼遠野の月

□九話
1ページ/5ページ

朝目が覚めてふと違和感を抱いた。
チャキッと晃夜を持ち上げる。


【う〜ん…李啓?】

『晃夜…客だ』

【え?】


ブンッと鞘から抜いた晃夜を投げる。
ガツンと外で音がし、外に飛び出した。

そこには木に刺さっているはずの晃夜が地面に刺されていた。


『チッ…』

【ちょっとちょっと李啓
 僕投げ道具じゃないんだけど】

『悪かったって…にしても』


うーん、と唸りながら顎に手を添える。


『感じたことのある畏れだった…
 誰だ・・・・・?』


懐かしい畏れ
以前何度も食らわされて嫌気がさした畏れ――


『気のせいか…』

「おーい李啓!」


そう声をかけてきたのは淡島だった。
晃夜を引き抜いて鞘に戻す。


『おはよう淡島。
 そんなに慌ててどうした?』

「おはよう!
 ってそうだ実戦場来てくれよ!!」

『?』

「いいから早く!!」


手を引かれて連れてかれた。
実戦場に付けば無残にも大木が倒れていた。
皆がじーっとイタクを見つめていた。


「またイタクか…」

「何回壊す気だお前は…」

「だから俺は今さっき来たから違うって言ってんだろ!」


ぎゃいぎゃいとそんな騒ぎも起きている。


『どうなってんだこりゃ…』


苦笑いしてふと空を見上げる。
黒い影が空を舞った。


―え・・・・・?


「あれ」

「なんか眠くなってきた…」

「ふぁ〜…」


皆が睡魔に襲われる。
李啓は全神経を集中させた。


『――っ!畏れを発動させろ!!』

「え?」

『良いから!!
 眠って死にたくなかったら早く!!』


李啓の真剣な声に皆が慌てて集中した。
と、いってもほとんど皆眠りについている。


「ふ、はは!さすがだね李啓」

『!』

【李啓、上!!】


晃夜の声に振り向き飛んできた苦無を弾き返す。
弾かれた苦無が実戦場に刺さった。


「!あいつは…」

「やあ、久しぶりだね李啓。」


そこにいたのは




『・・・・・闇華』


昔の親友だった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ